起訴人員(過失運転致死傷等及び道交違反によるものを除く。以下この節において同じ。)及び高齢者率(起訴人員に占める高齢者の比率をいう。以下この項において同じ。)の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別(犯行時の年齢による。以下この節において同じ。)に見ると,7-3-2-3図のとおりである。
高齢者の起訴人員は,この20年間増加傾向にあり,窃盗及び公務執行妨害等に罰金刑が新設された平成18年(9,038人,前年比1,420人増)と翌19年(1万898人,前年比1,860人増)には,それぞれ前年から2割前後増加し,その後もおおむね増加を続けたが,28年からわずかずつ減少し,29年は1万3,207人(前年比2.6%減)であった。29年は,10年(3,130人)の約4.2倍,20年(1万1,059人)の約1.2倍であり,70歳以上(7,188人)に限ると,10年(1,049人)の約6.9倍,20年(5,510人)の約1.3倍であった(CD-ROM参照)。
女性高齢者の起訴人員は,窃盗及び公務執行妨害等に罰金刑が新設された平成18年(1,128人,前年比334人増)と翌19年(1,719人,前年比591人増)に前年比で約4〜5割ずつ急増し,それ以降も増加を続けていたが,28年,29年とやや減少し,同年は2,302人(前年比6.2%減)であった。29年は,10年(257人)の約9.0倍,20年(1,776人)の約1.3倍であり,70歳以上(1,527人)に限ると,10年(101人)の約15.1倍,20年(1,029人)の約1.5倍であった(CD-ROM参照)。
高齢者率は,平成10年は2.4%であったが,以後上昇傾向にあって,29年は11.6%となり,女性の高齢者率は10年の2.6%から28年の18.2%まで上昇したが,29年は17.4%であった(CD-ROM参照)。
起訴人員の人口比の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-4図のとおりである。
高齢者の起訴人員の人口比は,20〜64歳の者と比べて過去20年間一貫して低いが,平成29年における65〜69歳の者,70歳以上の者の起訴人員の人口比は,それぞれ60.7,28.5であり,最近20年間でそれぞれ約2.0倍,約3.7倍に上昇した(CD-ROM参照)。
女性については,平成29年の65〜69歳の者,70歳以上の者の起訴人員の人口比は,それぞれ15.1,10.3であり,最近20年間でそれぞれ約3.5倍,約8.6倍に上昇した(CD-ROM参照)。
起訴人員中の初犯者(罰金以上の有罪の確定裁判を受けたことがない者をいう。以下この項において同じ。)・有前科者(罰金以上の有罪の確定裁判を受けたことがある者をいう。以下この項において同じ。)人員の構成比の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-5図のとおりである。
総数では,高齢者は,非高齢者と比べて,過去20年間一貫して,有罰金前科者(有前科者のうち,罰金の前科のみがある者をいう。以下この項において同じ。)の割合が高く,初犯者の割合が低い。
女性では,高齢者,非高齢者共,窃盗及び公務執行妨害等に罰金刑が新設された平成18年以降,有罰金前科者の割合がおおむね上昇しているが,高齢者の方が顕著に高く,29年は25.8%と,女性高齢者の4人に1人が罰金以上の前科としては罰金前科のみを有していた。
平成29年の高齢者の起訴人員の罪名別構成比を総数・男女別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-6図のとおりである。
高齢者は,男女共に窃盗の割合が最も高かった。特に70歳以上の女性は,窃盗の割合が80.6%であった。傷害・暴行は,検察庁終局処理人員と同様に,高齢者では,65〜69歳の者,70歳以上の者共に,女性と比べて男性が高く,1割を超えていた。なお,殺人は,65〜69歳の男性で0.3%(16人),70歳以上の男性で0.4%(21人),65〜69歳の女性で0.3%(2人),70歳以上の女性で0.6%(9人)であった(CD-ROM参照)。特別法犯では,男女共に,年齢層が高い者ほど,廃棄物処理法違反の割合が高い。また,近年窃盗に次いで全体の入所受刑者人員が多い覚せい剤取締法違反について見ると,平成29年の起訴人員に占める割合は,65〜69歳の者,70歳以上の者のいずれについても,総数,男女共,全年齢層と比べて相当低い(入所受刑者全体の罪名別人員については,2-4-1-6図CD-ROM参照)。
平成29年の窃盗の起訴人員のうち,65〜69歳の者は,公判請求1,374人(全年齢層の5.5%),略式請求682人(同10.2%)であり,70歳以上の者は,公判請求1,631人(同6.5%),略式請求1,494人(同22.3%)であった。女性では,65〜69歳の者は,公判請求260人(全年齢層の女性の8.4%),略式請求262人(同9.9%)であり,70歳以上の者は,公判請求532人(同17.1%),略式請求698人(同26.4%)であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
また,平成29年の傷害・暴行の起訴人員のうち,65〜69歳の者は,公判請求176人(全年齢層の5.3%),略式請求456人(同5.6%)であり,70歳以上の者は,公判請求175人(同5.2%),略式請求439人(同5.4%)であった。女性では,65〜69歳の者は,公判請求6人(全年齢層の女性の3.2%),略式請求14人(同3.5%)であり,70歳以上の者は,公判請求9人(同4.9%),略式請求18人(同4.5%)であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
窃盗の起訴人員中の初犯者・有前科者人員の構成比の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,7-3-2-7図のとおりである。
総数では,高齢者は,非高齢者と比べて,過去20年間一貫して,有前科者の割合が高く,初犯者の割合が低い。
女性では,高齢者,非高齢者共,窃盗及び公務執行妨害等に罰金刑が新設された平成18年以降,有罰金前科者の割合がおおむね上昇しているが,高齢者の方が顕著に高く,29年は30.0%と,女性高齢者の約3割が罰金以上の前科としては罰金前科のみを有していた。
平成29年の窃盗の起訴人員のうち,初犯者で略式請求を受けた高齢者は1,178人,有前科者で略式請求を受けた高齢者は998人であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
平成29年の傷害・暴行の起訴人員のうち,65〜69歳の者は632人,そのうちの有前科者は375人(有前科者率59.3%)であり,70歳以上の者は614人,うち有前科者は342人(同55.7%)であり,いずれも有前科者が過半数を占めていた(検察統計年報による。)。
平成29年の殺人の起訴人員のうち,65〜69歳の者は18人であり,そのうち有前科者が10人(同55.6%)であったが,70歳以上の者は30人であり,うち有前科者が6人(同20.0%)であった(検察統計年報による。)。