平成30年4月1日現在,女性の受刑者の収容施設として指定されている刑事施設(医療刑務所及び拘置所を除く。以下この項において「女子刑事施設」という。)は,栃木,笠松,和歌山,岩国及び麓の各刑務所,札幌,福島,豊橋及び西条の各刑務支所並びに加古川刑務所及び美祢社会復帰促進センターの各女性収容棟である。
4-7-2-3図は,刑事施設における女性被収容者の年末収容人員及び収容率(年末収容人員の収容定員に対する比率)の推移(平成15年以降)を見たものである。女性被収容者の年末収容人員は,23年まで増加傾向にあったが,24年からは減少している。収容率は,18年までは100%を超えていたが,女性受刑者の収容定員が拡大されたこともあって,23年からは低下している。29年末現在において,女性の収容定員は6,477人(このうち既決の収容定員は4,825人)であるところ,その収容率は68.6%(既決80.8%,未決33.0%)であった(CD-ROM参照。なお,男女総数の収容率については,2-4-1-2図参照)。
4-7-2-4図は,女性入所受刑者の人員(罪名別)及び女性比の推移(最近20年間)を見たものである。女性入所受刑者の人員は,平成5年から18年(2,333人)まで増加し続け,19年に若干減少した後はおおむね横ばいで推移していたが,28年からは減少している(矯正統計年報による。)。29年は1,892人(前年比113人(5.6%)減)であり,10年(1,199人)の約1.6倍であった。罪名別に見ると,窃盗の増加が著しく,29年(879人)は,10年(252人)の約3.5倍であった(CD-ROM参照)。女性比については,12年以降16年連続で上昇し続けていたが,28年からは低下傾向にある(なお,入所受刑者の女性人口比については2-4-1-3図,年齢層別構成比については2-4-1-5図,女性高齢者の入所受刑者人員・高齢者率・罪名別構成比等については第7編第3章第4節をそれぞれ参照)。
4-7-2-5図は,平成29年における出所受刑者(出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者に限る。)の帰住先別構成比を男女別に見たものである。女性は,男性と比べて,配偶者や「その他の親族」を帰住先とする者の割合が高い。
女性受刑者については,その特性に応じた処遇の充実を図るため,地域の医療・福祉等の専門家と連携する「女子施設地域連携事業」の推進や,女性受刑者特有の課題に係る処遇プログラムの策定等が行われている。
女子施設地域連携事業は,地方公共団体,看護協会,助産師会,社会福祉協議会等の協力の下,女子刑事施設が所在する地域の医療,福祉,介護等の専門家とネットワークを作り,専門家の助言・指導を得て,女性受刑者特有の問題に着目した処遇の充実等を図るものである。同事業の実施施設は,平成26年度は栃木刑務所,和歌山刑務所及び麓刑務所の3庁であったが,27年度から札幌刑務支所,笠松刑務所,加古川刑務所及び岩国刑務所が,28年度から福島刑務支所及び西条刑務支所が,30年度から豊橋刑務支所が新たに加わり,対象となる女子刑事施設10庁全てにおいて事業が展開された。
女性受刑者特有の課題に係る処遇プログラムとしては,平成27年度から,一般改善指導の枠組みの中で,<1>窃盗防止指導,<2>自己理解促進指導(関係性重視プログラム),<3>自立支援指導,<4>高齢者指導,<5>家族関係講座の5種類のプログラムが実施されている。
女子の少年院入院者は,女子のみを収容する少年院(9庁)又は男女を分隔する施設がある第3種少年院(2庁)のいずれかに収容される。
4-7-2-6図は,女子少年院入院者の人員(非行名別)及び女子比の推移(最近20年間)を見たものである。女子の少年院入院者の人員は,平成13年までは増加傾向にあったが,その後は減少傾向にある。男子の少年院入院者の人員も減少傾向にあるが,女子の減少の程度がより大きく,女子比は緩やかな低下傾向にある(3-2-4-1図CD-ROM参照)。非行名別に見ると,17年までは覚せい剤取締法違反の人員が他の非行名と比べて最も多かったが,その人員は18年以降減少傾向にあり,29年(25人)は前年より23人減少し,17年(125人)の5分の1であった(少年院入院者の非行名別構成比については,3-2-4-3図参照)。
なお,女子の少年院入院者は,男子と比べ,保護者等からの被虐待経験があるとする者の割合が高い(3-2-4-8図参照)。
女子の少年院入院者の処遇に関しては,平成25年度以降,処遇上特別の配慮を必要とする女子少年院在院者に対する処遇プログラムの試行と内容の検討が続けられており,28年度から,女子少年に共通する処遇ニーズに対応して全在院者を対象に実施する「基本プログラム」(自己開示・他者理解の態度を育て,自尊感情を高めるとともに,状況に適した対応が取れるようにすることを目的とした「アサーション・トレーニング」及びマインドフルネス瞑想を体験的に理解させることで衝動性の低減や統制力の向上等を目指す「マインドフルネス」)と,特に自己を害する程度の深刻な問題行動を有する処遇ニーズの高い在院者を対象に実施する「特別プログラム」(自傷及び摂食障害に対するプログラム)が試行されている。