前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成30年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2

2 強制性交等・強制わいせつ

平成29年6月,刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)が成立し,同年7月13日施行された。同法により,従来の強姦が,強制性交等に改められ,被害者の性別を問わなくなり,かつ,性交(姦淫)に加え肛門性交及び口腔性交をも対象とし,法定刑の下限が引き上げられるとともに,監護者わいせつ・監護者性交等が新設され,18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じたわいせつ行為や性交等が処罰されることとなり,強姦等の非親告罪化等がなされた。

強制性交等(前記改正前は強姦及び準強姦であり,改正後は強姦,準強姦,準強制性交等及び監護者性交等を含む。)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近20年間)は,1-1-2-5図のとおりである。認知件数は,平成15年に2,472件を記録した後,減少傾向にあったが,29年は増加し1,109件(前年比120件(12.1%)増。なお,前記改正によって対象が拡大した点には留意する必要がある。)であり,うち女性を被害者とするものは1,094件であった(6-1-1-2表参照)。検挙率は,10年から低下し,14年に62.3%と戦後最低を記録したが,その後は上昇傾向にあったものの,29年は低下し92.6%(前年比5.5pt低下)であった(CD-ROM資料1-2参照)。

このうち,平成29年における監護者性交等の認知件数は16件であり,検挙件数は13件,検挙率は81.3%であった(警察庁刑事局の資料による。)。

なお,肛門性交のみ,口腔性交のみ,又は肛門性交及び口腔性交のみを実行行為とする強制性交等について,平成29年末までに第一審判決があったものとして法務省刑事局に対し各検察庁から報告があった件数は,3件であった(法務省刑事局の資料による。)。

1-1-2-5図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
1-1-2-5図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
Excel形式のファイルはこちら

強制わいせつ(前記改正前は準強制わいせつを含み,前記改正後は準強制わいせつ及び監護者わいせつを含む。)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近20年間)は,1-1-2-6図のとおりである。認知件数は,平成11年から急増し,15年に昭和41年以降で最多の1万29件を記録した。その後,平成21年まで減少し,22年から増加傾向にあったが,26年から減少に転じ,29年は5,809件(前年比379件(6.1%)減。なお,前記改正によって対象が縮小(口腔性交及び肛門性交が,強制性交等の対象行為となった。)及び拡大(監護者わいせつが新設された。)した点には留意する必要がある。)であった。検挙率は,11年から急激に低下し,14年に35.5%と昭和41年以降で最低を記録したが,その後は上昇傾向にあり,平成29年は74.4%(前年比6.4pt上昇)であった(CD-ROM資料1-2参照)。

このうち,平成29年における監護者わいせつの認知件数は18件であり,検挙件数は12件,検挙率は66.7%であった(警察庁刑事局の資料による。)。

1-1-2-6図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
1-1-2-6図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
Excel形式のファイルはこちら