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平成29年版 犯罪白書 第7編/第4章/3

3 まとめ

この章では,犯罪や非行をした者の更生支援における民間協力と多機関連携について,その現状や課題を世論調査や各種統計資料,コラム等を通じて概観してきた。特に,民間協力や多機関連携の好事例がどのように進展し,有効に機能しているのかといったプロセス等については,主にコラムに基づいて共通する特徴の抽出・整理を試みた。これをまとめたものが7-4-1図である。各取組に携わる当事者からは,熱意と実感に満ちた多くの声を聴くことができた。ただし,これら取組の有効性等について,統計等の分析によって裏付けるには至っておらず,好事例に見られるプロセス等が再犯防止にどのような影響があるのかは未解明であり,検証手法の検討も含め,そうした研究は今後の課題である。再犯防止施策の効果的な実施につながるような調査及び研究の在り方についての更なる検討の過程で,民間協力や多機関連携の効果が示されれば,国民や地方公共団体等に実証的な根拠に基づき協力の必要性を訴えることも可能となろう。また,犯罪や非行をした者の更生に対する国民の意識についても,諸外国で行われている刑事司法制度に関する意識調査等を参考にしながら,より精緻な質問や解析方法の設計に基づく調査研究を行い,一層分析を深めることも検討すべきであろう。

犯罪や非行をした者も,この社会を構成する一員であり,包摂すべき存在である。時間がかかろうとも,広報・啓発活動を積み重ね,犯罪や非行をした者と一般の国民とをあたかも別の存在と考えるような硬直的な認識を,犯罪や非行をした者も同じ地域に暮らす住民であるという方向へと少しでも近づけていくことが必要であり,そういった意識の醸成こそが民間協力者との協働や多機関連携による切れ目のない,息の長い再犯防止施策を可能にし,更生を支援する地域のネットワークを強固なものにする大きな支えとなると考えられる。

7-4-1図 民間協力者との協働の拡充と多機関連携の促進のサイクル
7-4-1図 民間協力者との協働の拡充と多機関連携の促進のサイクル