前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成29年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/コラム15

コラム15 地域生活定着支援センターと保護観察所の連携

地域生活定着支援センターは,保護観察所と協働して,刑事施設等に入所中の段階から福祉サービス等の利用支援を行うことなどにより,円滑な地域福祉への移行を図る役割を担っている。ここでは,埼玉県地域生活定着支援センターとさいたま保護観察所の取組を中心に,地域生活定着支援センターと保護観察所の連携の状況について紹介する。

同センターと同保護観察所は,月一回以上の頻度でケースの選定やフォローアップについて話し合う会議を設けており,積極的な情報共有に努めている。

木内英雄 同センター長によると,初めは刑事施設出所者等の関係書類に記載された罪名等に抵抗感があり,慣れるまでに時間がかかったという。しかし,実際に会ってみると,書類で見るのとは違い,「今まで支援してきた福祉的な支援を必要としている一人の人」として見ることができるようになり,支援対象者に対する印象が変わったという。

受入先となる福祉施設は,支援対象者を受け入れるに当たり,他の施設利用者への影響や地域との関係,職員体制等,様々なことを考慮する必要があり,何かあったときの責任や対応について,不安を感じる施設もあるという。そのような事情に加え,埼玉県の福祉施設は,高齢者施設,障害者施設共に満床であることも多いという。

木内センター長は,福祉施設が全責任を負うのではなく,同センター,同保護観察所等の支援者がおり,それぞれが役割を果たすことが大切であることを福祉施設に対して丁寧に説明し,まずは支援対象者と面接してもらうよう働き掛けている。福祉施設と支援対象者との面接が実現したケースについては,大多数が受入れについて前向きに考えてもらえるという。また,同センターでは,支援対象者の受入れにつながった場合には,支援対象者だけでなく,施設職員の相談にも乗るなど,施設に対するフォローアップを手厚くしている。受入れにつながらなかった場合にも,前記のような様々な事情を理解し,次の機会につながるような関係作りを心掛けているという。

同保護観察所の保護観察官によれば,同センターの熱心なフォローアップ体制を目の当たりにし,これまで以上に保護観察対象者の保護観察期間終了後の生活に目を向けるようになったという。しかし,同センターの丁寧なフォローアップによって安定した生活が実現しているケースが増えている一方で,どこまでフォローアップを続けるかが今後の課題であると感じている。保護観察所は,支援対象者の保護観察期間が終了すると, 当該対象者に関与できなくなってしまうため,生活が安定せず,長期間にわたるフォローアップが必要なケースでは,同センターの負担が大きくなってしまうこともあるという。同保護観察所では,出所後の保護観察期間が短いケースでは,更生緊急保護(第2編第5章第3節参照)の措置を活用して保護観察官が関与できる期間を確保するなど,既存の制度を柔軟に運用することで,支援体制が充実するよう配慮しているという。

地域生活定着支援センター職員とさいたま保護観察所職員による会議の風景【写真提供:さいたま保護観察所】
地域生活定着支援センター職員とさいたま保護観察所職員による会議の風景
【写真提供:さいたま保護観察所】