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平成29年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/3

3 鑑別業務

鑑別(非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上,その事情の改善に寄与するため,その者の処遇に資する適切な指針を示すことをいう。)には,主として,家庭裁判所の求めに応じて行う審判鑑別のほか,家庭裁判所以外の関係機関の求めに応じて行う処遇鑑別がある。家庭裁判所以外の関係機関の求めによる鑑別は,従来行われていたが,少年鑑別所法では,鑑別を求める機関として,児童自立支援施設の長及び児童養護施設の長が明記されたほか,刑事施設の長の求めに応じて行う鑑別において,対象となる者の年齢を16歳未満から20歳未満に引き上げるなど,鑑別を求める機関や鑑別の対象の拡大が図られた。さらに,同法と同時期に制定された少年院法でも,少年院の長の求めに応じて行われる鑑別において,在院者を一時的に少年鑑別所に収容して鑑別を実施することが可能となるなど,鑑別の形態の多様化が図られた。

(1)審判鑑別
ア 収容審判鑑別

審判鑑別のうち,観護措置の決定により少年鑑別所に収容されている者に対して行う鑑別を収容審判鑑別という。収容審判鑑別の標準的な流れは,3-2-3-5図のとおりである。少年鑑別所では,鑑別面接,心理検査,行動観察,医学的検査及び診察の結果に,外部から得られた情報を加えて検討し,在宅保護(保護観察等),収容保護(少年院送致等)等の処遇に係る判定を行う。判定の結果は,対象者の資質の特徴,非行要因,改善更生のための処遇指針等と共に鑑別結果通知書に記載されて家庭裁判所に送付され,審判の資料となる。審判の結果,保護観察や少年院送致の決定がなされた場合には,それぞれ,保護観察を行う保護観察所及び送致先の少年院に送付され,処遇の参考に供される。 また,法務省矯正局では,「再犯防止に向けた総合対策」(第5編第1章参照)の一環として,少年の再非行防止に資するための調査ツールである法務省式ケースアセスメントツールMJCA)を開発し,平成25年度から少年鑑別所において運用を開始している。MJCAは,心理学,犯罪学等の人間科学の知見を踏まえて,少年鑑別所における実証データに基づき,統計学的な分析を経て開発したもので,対象者の再非行の可能性等を把握するとともに,保護者との関係性の調整や社会適応力の向上等,何を目標とした働き掛けを行えば再非行を防止できるのかを明らかにしようとするものである。

3-2-3-5図 少年鑑別所における収容審判鑑別の流れ
3-2-3-5図 少年鑑別所における収容審判鑑別の流れ

3-2-3-6表は,平成28年に収容審判鑑別を終了した者について,鑑別の判定と審判における決定等との関係を見たものである。

3-2-3-6表 収容審判鑑別の判定と審判決定等との関係
3-2-3-6表 収容審判鑑別の判定と審判決定等との関係
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なお,少年鑑別所では,観護措置の決定等により在所している者に対し,その健全な育成のため,観護処遇の一環として,その自主性を尊重しつつ,生活態度に関する助言・指導,学習等の機会の提供等を行っている。

イ 在宅審判鑑別

審判鑑別のうち,少年鑑別所に収容されていない者に対して,少年鑑別所に来所させて行う鑑別など,収容審判鑑別以外のものを在宅審判鑑別という。平成28年における在宅審判鑑別の受付人員は343人であった(矯正統計年報による。)。

(2)処遇鑑別

地方更生保護委員会,保護観察所の長,児童自立支援施設の長,児童養護施設の長,少年院の長又は刑事施設の長の求めによる鑑別を処遇鑑別という。処遇鑑別では,処遇の経過,課題及びその分析,今後の処遇指針等について鑑別結果通知書を作成し,各機関における対象者の処遇に資することとしている。

なお,平成28年における処遇鑑別の受付人員の内訳は,地方更生保護委員会又は保護観察所が4,324人,少年院又は刑事施設が1,627人,児童自立支援施設又は児童養護施設が28人であった(矯正統計年報による。)。