法制度整備支援は,法制度やその運用体制の整備の遅れが,国民生活の安定と社会の発展の障害となっている開発途上国に対し,その要請に基づき,その国が自らの法制度とその運用を改善しようとする自助努力を支援するものであり,開発途上国において「法の支配」が確立され,法制度が適正に機能することにより,その国の政治・社会・経済が安定し,これらの国の持続的な発展につながることを目指しているが,ひいてはその国が属する地域全体の安定と発展にもつながり,国際社会の平和と安全に寄与し得るものである。
また,平成25年(2013年)5月に策定された法制度整備支援に対する政府の考え方を示す「法制度整備支援に関する基本方針(改訂版)」においては,日本企業の海外展開のための投資環境の整備等の観点が新たに加えられ,官民連携のオールジャパンによる支援体制を強化していくこととされている。
我が国による具体的な支援は,その多くが政府開発援助(ODA)の枠組みで,独立行政法人国際協力機構(JICA)や関係者の協力により行われてきたが,法務省も,これを専門に手がける部署として法務総合研究所内に国際協力部を設置し,職員の派遣,支援対象国の関係者の研修等の支援活動を活発に展開している。法制度整備支援の実施状況は,2-6-5-2図のとおりである。我が国は,平成6年(1994年)にベトナムに対する支援を開始して以来,カンボジア,ラオス,インドネシア,モンゴル,ウズベキスタン,中国,ネパール,東ティモール,ミャンマー等の主としてアジア諸国に対して支援を行ってきている。支援の内容としては,民商事法分野のものが中心であるが,刑事法分野でも,ベトナムにおいては,刑事訴訟法改正や刑法改正のための知識・情報の提供を目的としたセミナー・共同研究,ラオスにおいては,刑事手続に関する執務参考資料等の作成や刑法改正のための知識・情報の提供,東ティモールにおいては,少年法運用のための知識・情報の提供を目的としたセミナー,ミャンマーにおいては,裁判官・検察官向けの能力向上を目的としたセミナー・研修等をそれぞれ実施している。