国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)は,日本国政府と国連の協定に基づき,昭和37年(1962年)に設置され,法務総合研究所国際連合研修協力部が運営している地域研修所であり,刑事司法分野における研修,研究及び調査を実施し,アジア太平洋地域を始めとする世界各国の刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努めている。
UNAFEIの主要な研修である国際研修(年2回)及び国際高官セミナー(年1回)は,刑事司法分野における国連の優先事項及びその時々における国際社会の関心に沿ったテーマ等を考慮して開催している。近年では,「少年司法と国際準則」,「効果的な非行少年の処遇」,「更生及び社会復帰,被害者あるいは証人としての児童をめぐる諸問題」,「社会内処遇における多機関連携」,「次世代を担う矯正・保護職員の育成」,「サイバー犯罪の現状と対策」等を取り上げており,平成29年度(2017年度)の国際研修は,「組織犯罪とテロリズムに対する刑事司法の対応」を,国際高官セミナーは,「犯罪防止・刑事司法分野における法の支配の強化」をそれぞれ主要テーマとして開催する。主要な研修としては,ほかにも汚職問題に特化した「汚職防止刑事司法支援研修」がある。これらの研修の対象は,開発途上国の裁判官,検察官,刑務官,保護観察官,警察官等であり,我が国からも刑事司法関係者が参加している。研修では国内外の専門家及びUNAFEIの教官による講義のほか,研修参加者による自国の制度等についての発表,グループ討議等を通じて相互理解の促進と経験の共有を図っている。
このほか,特定の国や地域を対象とする研修や調査研究として,東南アジア諸国における「法の支配」と「良い統治(グッドガバナンス)」に関する地域セミナー,ネパール及びベトナムとの司法制度比較共同研究,ベトナム法整備支援研修,仏語圏アフリカ刑事司法研修等を実施している。また,平成27年(2015年)からミャンマー刑務所改革支援を開始し,平成28年度(2016年度)からはタイ法務省と共同でカンボジア,ラオス,ミャンマー及びベトナムに対する社会内処遇推進のための研修を開始した。
平成29年(2017年)6月時点において,UNAFEIの研修に参加した刑事司法関係者(日本人を含む。)は,138の国と地域から,5,500人以上となっている。これまでにUNAFEIの研修・セミナーに参加した刑事司法関係者の中には,それぞれの国において,最高裁判所長官,法務大臣,検事総長その他の重要な地位に昇進した者が多数含まれており,UNAFEIのネットワークは,我が国が刑事司法分野における国際協力を推進していく上での基盤となっている。
平成29年(2017年)6月15日現在における,研修参加人員の地域別構成比は,2-6-5-1図のとおりである。
また,UNAFEIは,19の機関で構成されている国連犯罪防止・刑事司法プログラムネットワーク(PNI)の一員として,毎年,コミッションに招へいされているほか,PNIの他の機関とも緊密な連携を取りながら犯罪防止や刑事司法に関する国連の政策の立案,実施にも協力している。
さらに,UNAFEIは,平成27年(2015年)の第13回コングレスにおいて,公式ワークショップのパネルの企画・運営を担当し,次回,平成32年(2020年)に日本で開催される予定の第14回コングレスでは,ワークショップを主催する予定である。