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平成29年版 犯罪白書 第2編/第1章/7

7 新規立法の動向
(1)刑事訴訟法等の改正

平成28年5月,刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)が成立し,同年6月に公布された。同法は,現在の捜査・公判が取調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあるとの指摘を踏まえ,このような状況を改めて,刑事手続を時代に即したより機能的なものとするため,証拠の収集方法の適正化・多様化及び公判審理の充実化を図ろうとするものであり,取調べの録音・録画制度の導入,証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度(以下「合意制度」という。)の導入,通信傍受の対象犯罪の拡大及び手続の合理化・効率化,被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大,犯罪被害者等及び証人を保護するための措置の導入等を内容とする。既に一部が施行済みであるところ,合意制度,刑事免責制度,被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大及びビデオリンク方式による証人尋問の拡充に関する規定は30年6月までに,取調べの録音・録画制度の導入及び通信傍受の手続の合理化・効率化に関する規定は31年6月までに施行される。

(2)組織的犯罪処罰法等の改正

平成29年6月,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成29年法律第67号)が成立し,同月公布された。同法は,近年における犯罪の国際化・組織化の状況に鑑み,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の締結に伴い,所要の規定を整備することを目的とするものであり,テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画及び証人等買収行為を処罰する規定等が新設された(同年7月11日施行。なお,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」については,本編第6章第1節1項(1)参照)。

(3)性犯罪に関する刑法の改正

平成29年6月,刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)が成立し,同月公布された。同法は,近年における性犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処をするために制定されたものであり,これにより,従来の強姦罪が,被害者の性別を問わず,かつ,性交(姦淫)に加え肛門性交及び口腔性交をも対象とし,法定刑の下限を引き上げた強制性交等罪に改められるとともに,18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じたわいせつ行為や性交等を処罰する監護者わいせつ罪・監護者性交等罪の新設や,強姦罪等の非親告罪化等がなされた(同年7月13日施行)。

(4)少年年齢・犯罪者処遇の見直しに向けた検討

法務大臣は,平成29年2月,法制審議会に対し,日本国憲法の改正手続に関する法律における投票権及び公職選挙法における選挙権を有する者の年齢を18歳以上とする立法措置,民法の定める成年年齢に関する検討状況等を踏まえ,少年法の規定について検討が求められていることのほか,近時の犯罪情勢,再犯の防止の重要性等に鑑み,少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること並びに非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備の在り方並びに関連事項について諮問を行った。現在,同審議会において,検討が進められている。