法務総合研究所が行った女性の犯罪者・非行少年に関する主要な研究は,5-2-4-1表のとおりである。
平成25年版犯罪白書では,女性の犯罪・非行について特集を組み,女性の犯罪の動向として,男性と比べて数は少ないものの,起訴人員及び入所受刑者人員とも20年前と比べて大きく増加していること,とりわけ女性の入所受刑者は,男性よりも急速な高齢化が見られ,精神障害を有する者の割合も男性より高いこと,若年者は覚せい剤事犯者が多いのに対し,高齢者は窃盗事犯者が多いことなどを明らかにした。その上で,女性の覚せい剤事犯者に対しては,新しい教育プログラムや回復訓練を受ける機会の拡充を図る必要があること,一般社会においては,結婚や出産(子育て)等を想定したキャリアプランやライフプランを考え,これを見据えた就労指導が広がりつつあるところ,それらを参考にして,短期視点と長期視点を持ち合わせた働き掛けを行う必要があること,女性の窃盗事犯者に対しては,特別調整のほか,家族や親族との関係調整が重要であることなどを指摘している。
また,平成26年版犯罪白書では,窃盗事犯者の動向や特別調査の結果等を踏まえ,女性の窃盗事犯者は,男性と比べて,家族関係等が保たれている者の割合が高く,一見すると比較的安定した生活環境にあると思える者が多い反面,犯行の背景事情として家庭的要因や対人関係の問題を抱えている者が目立ち,精神疾患を含む心理面に何らかの不安定要素を抱えている者が少なくないことなどを明らかにした。また,女性の高齢者は,他の年齢層や男性の高齢者と比べて,窃盗の再犯率が高く,特に「近親者の病気・死去」を犯行の背景事情に持つ者は窃盗の再犯率が高いことなどを明らかにした上で,再犯防止のためには,家族等の人間関係の把握や調整,心理的なサポートを図る必要があり,家族との間の意思疎通等が必ずしも良好に保てない場合には,家族間の調整のために,地方公共団体や地域社会の専門家,保護司等によるサポート体制も必要となる旨を指摘している。
女性の被虐待経験に関しては,一連の児童虐待に関する研究(研究部報告11,19,22)において,少年院在院者に対するアンケート調査の結果,保護者からの身体的暴力,性的暴力,ネグレクトのうち少なくとも一つ以上の被虐待経験のある者が全体の約半数を占め,その割合は女子の方が高い(57.1%)ことなどを明らかにした。
このほか,研究部報告45では,家庭内の重大犯罪の内容を分析し,昭和期はその後の平成期に比べ,女性による犯行として,嬰児殺が顕著に多かったこと,近年の家庭内の殺人は母殺しが増加しており,その加害者が女性である比率が増加していることなどを明らかにした。