少年院には,次の<1>から<4>までの種類があり,それぞれ,入院時の少年の年齢,犯罪傾向の程度及び心身の状況等に応じて,以下の者を収容する。
<1> 初等少年院 | 心身に著しい故障のない,おおむね12歳以上おおむね16歳未満の者 | |
<2> 中等少年院 | 心身に著しい故障のない,おおむね16歳以上20歳未満の者 | |
<3> 特別少年院 | 心身に著しい故障はないが,犯罪的傾向の進んだ,おおむね16歳以上23歳未満の者。ただし,16歳未満でも,受刑者は収容することができる。 | |
<4> 医療少年院 | 心身に著しい故障のある,おおむね12歳以上26歳未満の者 |
少年院での処遇は,短期処遇と長期処遇とに分けられ,さらに,短期処遇は,一般短期処遇と特修短期処遇とに分けられる。初等少年院及び中等少年院における処遇は,短期処遇又は長期処遇として実施され,特別少年院及び医療少年院における処遇は,長期処遇として実施される。それぞれの処遇区分の対象者は,以下のとおりである。
<1> 一般短期処遇 | 早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的,集中的な指導と訓練により,その矯正と社会復帰を期待できる者(収容期間は原則として6月以内) | |
<2> 特修短期処遇 | <1>に記載の者に該当する者であって,非行の傾向がより進んでおらず,かつ,開放処遇に適するもの(収容期間は4月以内) | |
<3> 長期処遇 | 短期処遇になじまない者(収容期間は原則として2年以内) |
少年院の種類は,家庭裁判所が少年院送致決定に際し指定する。また,家庭裁判所は,少年院送致決定に際し,短期処遇が適切であると認めるときは,その旨の勧告を行い,少年の処遇区分は,その勧告に従って決定され,それ以外の場合には,少年は長期処遇を受ける。
平成25年における少年院入院者について,少年院の種類別・処遇区分別の人員を見ると,3-2-4-8表のとおりである。
一般短期処遇及び長期処遇については,処遇課程が設けられている(長期処遇においては,より細分化した処遇課程を設ける。)。少年院の在院者には,処遇課程にかかわらず,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育及び特別活動の五つの領域の指導が行われるが,処遇課程は,在院者を犯罪的傾向,学力の程度,将来の進路希望,心身の状況等に応じて分類し,在院者の特性に応じた最も効果的な処遇を行うために,矯正教育を行う領域に軽重を設定する(医療措置課程では,医療が優先的に実施される。)とともに矯正教育実施上の留意事項を定めたものである。
処遇課程等の種類・対象者は,3-2-4-9表のとおりであり,平成25年における少年院入院者の処遇課程等別の人員は,同表の人員欄のとおりである。
少年院における処遇の中核となるのは矯正教育であり,在院者には,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育及び特別活動の五つの領域にわたって指導が行われるとともに,心身の障害が原因で社会生活に適応できない者には医療を行う。また,少年院における処遇期間は,新入時教育,中間期教育及び出院準備教育の三期に区分されているが,少年院の長は,個々の在院者ごとに,それぞれの期に応じた矯正教育の目標並びにその基本的な内容及び方法を定める個別的処遇計画を作成し,矯正教育はこれに基づき実施される。
なお,少年院では,在院者の向上意欲を喚起し,自発的な努力により改善進歩の効果を上げさせるために,在院者の処遇段階を設けている(1級,2級及び3級に分けられ,1級及び2級は更に上・下に分けられている。)。少年院の在院者は,まず,2級下に編入され,その後,改善進歩に応じて各段階に移行し,これに応じて生活上の制約が緩和されるなどする。
前記の五つの領域における指導の主な内容は,以下のとおりである。
生活指導では,<1>非行に関わる意識,態度及び行動面の問題,<2>資質,情緒等の問題,<3>情操の涵(かん)養,<4>基本的生活習慣,遵法的・自律的生活態度及び対人関係,<5>保護環境(家族関係,交友関係等)上の問題,<6>進路選択,生活設計及び社会復帰への心構えについて,面接指導,作文指導,日記指導,ロールレタリング(役割交換書簡法),内省等の方法を用いて,教育が行われている。
在院者が自己の犯した非行と向き合い,その重大性や被害者の心情等を認識し,被害者に誠意をもって対応していくことを目的とした,「被害者の視点を取り入れた教育」も充実・強化されている。
また,少年の再非行・再犯防止を図る上では,その要因となり得る事情を改善し,又は出院後に当該事情に対処する能力を身につけるために,非行態様や類型に焦点を当てた働き掛けが不可欠であることから,矯正教育プログラム(薬物非行,性非行)が開発され,重点指導施設として指定された少年院に対象者を集約し,同プログラムに基づいた指導が行われている。
薬物問題については,平成23年度に矯正教育プログラム(薬物非行)が開発され,24年度から4庁の少年院(26年度に8庁に拡大)で実施され,性非行問題については,24年度に矯正教育プログラム(性非行)が開発され,25年度から2庁の少年院で実施されている。
現在,少年院で実施している職業補導の主な種目は,溶接,木工,土木建築,建設機械運転,農業,園芸,事務,介護サービス等である。平成25年における出院者のうち,在院中に,個別に指定された職業補導の種目に関連して資格・免許を取得した者は49.0%,それ以外で資格・免許を取得した者は50.6%であり,その取得者の資格・免許種目別構成比は,3-2-4-10図のとおりである。
在院者のうち,義務教育未修了者及び高等学校教育を必要とし,それを受ける意欲が認められる者には,学校教育の内容に準じた教科教育を実施している。それ以外の在院者に対しても,必要に応じ,補習教育として,社会生活に必要な基礎学力及び進学・復学のための学力を養成するために教科教育を行っている。学校等に委嘱して義務教育や高等学校教育を実施する院外委嘱教科教育を実施することもできる。平成25年における出院者のうち,中学校又は高等学校への復学が決定した者は,それぞれ129人,122人であり,在院中に中学校の修了証明書を授与された者は,283人であった(矯正統計年報による。)。なお,19年度からは,法務省と文部科学省の連携により,少年院内において,高等学校卒業程度認定試験を実施しているが,25年度の受験者数は538人,合格者数は,高卒認定合格者が169人,一部科目合格者が336人であった(文部科学省生涯学習政策局の資料による。)。
保健に関しては,少年院の医師,医務課職員等が,在院者の入院前の非行の内容や生活実態等を考慮しながら,疾病予防の知識の付与等,健康管理能力を向上させるための指導を行っている。
体育に際しては,様々な運動種目を通じて,在院者の基礎体力の向上並びに集中力,忍耐力及び持久力の涵(かん)養を図るとともに,集団競技等によりルールを守る態度や対人関係における配慮等が身に付くような指導に留意している。
少年院では,<1>自主的活動,<2>院外教育活動,<3>クラブ活動,<4>レクリエーション,<5>行事といった特別活動が行われている。
このうち,自主的活動としては,ほとんどの少年院において,在院者に日直,図書係,整備係,レクリエーション係等の役割を担当させ(役割活動),自主性,協調性等を涵(かん)養しているほか,集会,ホームルーム,機関誌の作成等も行われている。院外教育活動としては,社会奉仕活動,社会見学等が実施されており,社会奉仕活動の具体的内容としては,福祉施設でのボランティア活動や近隣の公園・公共施設等の清掃・美化活動等を実施している施設が多い。
少年の改善更生を図る上で,保護者の果たす役割は大きく,少年院においては,在院者の保護者に対し,在院者の非行に関わる問題等に適切に対処できるよう指導・助言を行うほか,矯正教育に関する情報の提供や保護者講習会を実施するなどしている。
少年院では,篤志面接委員,教誨師,更生保護女性会員,BBS会員等,社会の広範な各層の人々が民間ボランティアとして支援活動を行っている(第2編第4章第3節3項P71及び第5章第5節4項P89参照)。
篤志面接委員は,在院者に対し,精神的悩みについての相談・助言,教養指導等を行っており,平成25年末現在,564人を少年院の篤志面接委員として委嘱している(法務省矯正局の資料による。)。
教誨師は,在院者の希望に応じて宗教教誨を行っており,平成25年末現在,322人を少年院の教誨師として依頼している(法務省矯正局の資料による。)。
更生保護女性会員,BBS会員等は,定期的に少年院を訪問し,在院者と一緒に,誕生会,観桜会,成人式等の施設行事に参加したり,ゲームやスポーツを楽しんだり,在院者の意見発表会の審査員を務めるなど,様々な形で少年院の処遇を支援しており,これらの人々との触れ合いは,在院者にとって,更生に向けた大きな励みとなっている。
法務省では,平成18年度から,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施しているが,少年院でも,その一環として,在院者に対して,公共職業安定所の職員による職業相談等を実施している(第2編第4章第2節4項P70参照)。
また,平成21年度からは,厚生労働省と連携し,障害を有し,かつ,適当な帰住先がない在院者に対して,出院後速やかに福祉サービスを受けることができるようにするための特別調整を実施している(第2編第4章第2節5項P70参照)。