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平成25年版 犯罪白書 第7編/第4章/第3節/1

1 刑事手続における配慮

外国人被疑者等に対する適正手続を実質的に保障するため,刑事訴訟法や犯罪捜査規範等に基づき,外国人の取調べや身柄拘束等の場面で人権保障のための配慮がなされている。例えば,外国人の取調べや身柄拘束に際しては,言語,風俗,習慣等の相違を考慮し,我が国の刑事手続に関する基本的事項について,理解に資するような説明等を行うなどしている。

次に,B規約で規定される刑事手続等に係る人権保障規定の中でも,外国人の特性に応じた配慮の観点から保障されるべきものとして,その者の理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質を告げられること(14条3項(a)),裁判所で使用される言語を理解したり話すことができない場合には,無料で通訳の援助を受けること(同項(f))があり,国語に通じない者に陳述させる場合には,通訳人に通訳をさせなければならない旨が刑事訴訟法で定められている。そして,警察及び検察庁等の捜査機関は,この要請に応え,取調べ等における外国人被疑者等の人権を実質的に保障するために,様々な言語の通訳人を確保し,裁判所も,高等裁判所単位で法廷通訳人名簿を作成するなどして,様々な言語の法廷通訳人を確保しており,外国人に対してはその理解できる言語の通訳を介して司法手続が進められることとされている。平成24年における被告人通訳事件(被告人に通訳・翻訳人の付いた外国人事件)の通常第一審における終局人員は,2,468人であり,通訳言語は44言語に及び,通訳言語別に見ると,中国語766人(31.0%),タガログ語278人(11.3%),ポルトガル語238人(9.6%),韓国・朝鮮語227人(9.2%),ベトナム語194人(7.9%),英語173人(7.0%),スペイン語163人(6.6%)であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。

さらに,日本語ができない外国人被疑者・被告人の接見交通権を実質的に保障する観点からは,弁護人と接見する際に通訳人が必要であり,国選弁護人が直接通訳人を依頼できない場合には,法テラスの地方事務所が通訳人を紹介するなどしている。

また,領事関係に関するウィーン条約(以下「ウィーン条約」という。),二国間の領事関係条約・協定においては,外国人が逮捕されたり留置された場合等に,その旨を遅滞なく領事機関に通報し,当該外国人の属する国の領事官と交通するために,相当の便宜を与えなければならない旨定められている。そのため,捜査機関等においては,ウィーン条約締約国又は二国間の領事関係条約・協定締結国の外国人の身柄を拘束したときには,ウィーン条約のように,条約(協定)の定めで領事機関への通報が本人の要請を条件としている場合は,警察,検察といった捜査機関や裁判所等が本人の通報要請の有無を確認して,また,条約(協定)で本人の通報要請を条件としない場合は,条約(協定)の定めに従って,遅滞なく当該国の領事機関に身柄拘束の旨を通報しなければならない。