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都市と少年犯罪との関係は,大別して二つの問題を含んでいる。第一は大都市に少年犯罪が集中し,かつ,そこで増加する傾向を示すという点であり,第二は,大都市周辺地域,いわゆる新産業都市,および中小都市などに少年犯罪が増加することならびに農村における生活の都市化に伴って少年犯罪が増加するという点である。
III-25表は昭和三〇年および三四年から三八年までの間の刑法犯少年検挙人員の推移を示したものである。これによると,昭和三八年には六大都市の検挙人員は五一,二二七人,その他の地域のそれは一二三,一二四人であって,昭和三〇年に比していづれも著しく増加しているが,とくに,六大都市においては,昭和三〇年の指数を一〇〇とした場合,三八年には二三五となり,少年犯罪の都市集中の著しいことを示している(しかし,大都市以外の地域の少年犯罪の増加も昭和三〇年の六割強であって,看過することはできない)。しこうして,この現象を正しく判断するためには大都市およびその他の地域の人口の増減をも考慮に入れなければならないが,大都市については人口の移動が激しいので,その実態を把握することが必ずしも容易ではない。これに対して大都市以外の地域においては少年人口はさほど増加していないと考えられることは別に述べたとおりである(一二五頁)。それにもかかわらず,少年犯罪の数が増加しているのは,右に述べた第二の問題の存在を示唆するものである。しかし,さしあたり第二の問題については遺憾ながら資料が十分に得られない状況にあるため,以下主として第一の問題について述べ,第二の問題については簡単に言及する程度に止める。 III-25表 六大都市とその他の地域における少年刑法犯検挙人員の推移(昭和30,34〜38年) まず,大都市(ここでは代表的に六大都市をとる)の少年に比較的多い罪種をIII-26表でみると,昭和三八年に検挙された刑法犯少年についていえば,恐かつ,脅迫,強盗,傷害などが平均を上まわる比率を示している。窃盗はほとんど平均率に等しい。さらに,III-27表はこれらの罪種について最近五か年間の六大都市刑法犯少年の推移をみたものであるが,強盗を除いてはいずれの罪種も増加の傾向がみられる。とくに,窃盗が一四九,脅迫が一四一という指数を示し,平均増加指数の一三五を上回っていることは注意される。III-26表 六大都市および全国の刑法犯少年罪種別検挙人員と率(昭和38年) III-27表 六大都市における主要罪種別刑法少年検挙人員の推移(昭和34〜38年) 次に,III-28表によって六大都市における少年共犯事件数およびその推移をみると,昭和三〇年においては,八,八一五件にすぎなかった共犯事件が,三五年には二〇,一八四件,三八年には二四,六九一件と増加している。構成比率も昭和三〇年には一六・二%にすぎなかったが三五年に三三・五%に達し,同三八年にも三三・一%と高率を保っている。右の事実は,大都市の少年犯罪の傾向の一つとしての犯罪の集団化をある程度まで示すもののように思われる。III-28表 六大都市少年事件の共犯,単独別検挙件数の推移(昭和30,35,38年) また,刑法犯少年の中で本犯をおかす以前にも犯罪行為があり,なんらかの処分を受けたことのある者をIII-29表によってみると,昭和三八年には六大都市で一三,二五〇人となっている。これは同年次における処分歴ある検挙者の数の二九・八%にあたる。昭和三〇年および同三五年のそれと比較すると,同表に示すように,数の上でも,比率の上でも増加の一途をたどってきている。このことは,大都市に再犯の刑法犯少年が増加していることを物語るものである。III-29表 刑法犯少年検挙人員中処分歴のある者の推移(昭和30,35,38年) このように大都市における少年犯罪の動向には注目すべきいくつかの問題が存するが少年犯罪と都市との関係については,なお注目すべき点が他地域との関連においてみられるのである。その一は,いわゆる流入少年と犯罪の問題である。III-30表は最近四年間に東京少年鑑別所に収容された少年について,保護者居住地別の推移を示したものであるが,これによると,東京以外の府県に保護者のある少年の比率は,おおむね四三%から四五%を保ちつづけており,この種非行少年の半数近くがここ数年来他府県から東京に転入してきた者によって占められていることを示している。このことの背景的事実については,前章において説明したが(一二六頁),ここで改めて一言すれば,昭和三九年に東京少年鑑別所に収容された流入非行少年のうちには就職目的で上京した者が七〇・二%あるということ,および上京後非行までの期間が一年未満の者が五七・一%を占めているということは,問題の特殊性を示唆するものと考える。 III-30表 東京少年鑑別所収容非行少年の保護者の居住地別推移(昭和36〜39年) その二は,大都市周辺地域への少年犯罪の拡散である。III-31表によって,東京都における刑法犯少年の地域別の推移をみると,昭和三四年の各地域の指数を一〇〇とした場合,昭和三八年には都内二三区の指数が一二四となっているのに対し,その他の地域では一四六と大幅に増加しており,都下周辺地区での少年犯罪の伸び率が都内二三区におけるそれを上まわっている。このことは,少年犯罪が都市中心から,その周辺地域に拡散しつつある傾向の一端を示すものとして注意される。III-31表 東京都における少年刑法犯検挙人員の推移(昭和34〜38年) |