前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和40年版 犯罪白書 第三編/第一章/三/3 

3 刑法犯少年と共犯関係

 一般的には,共犯は刑罰の加重事由ではないし,共犯だからといって直ちに情状が重いということにはならない。しかしながら,刑法第一八〇条第二項が強かんの現場共犯を親告罪から除外し,また暴力行為等処罰に関する法律(大正一五年法律第六〇号)第一条および盗犯等の防止及処分に関する法律第二条第二号がそれぞれ数人共同の言行を加重類型としているなどの事実にかんがみるときは,共犯が情状に影響しうる場合もあるものと考えられる。と同時に,共犯は不良交友または犯罪集団存在の可能性を示すものであり,とくに少年の場合には,単独で犯罪を実行したか他人と共同して実行したかを区別して考えることは,相当に重要な意義を持つ。また,成人の場合でも共犯の存在は自己の罪悪感を弱め,犯罪の実行を心理的にも容易にすることが多いが,少年はもともと情意不安定であって付和雷同性が強く,容易に共犯化して,例えば粗暴犯罪などに走るということも念頭に置くべきである。
 昭和三八年(昭和三九年の統計はさしあたり利用できない)に検挙された刑法犯事件の総件数(解決件数を含まない)は一,〇三八,五六〇件であり,このうちで共犯事件は一七八,六四九件で,全体の一七・二%をしめている。この総件数中における共犯事件の割合はここ数年間ほとんど一定しており,一七ないし一八%程度となっている。この共犯事件のうちには,少年のみの共犯事件,成人のみの共犯事件および少年と成人による共犯事件がある。最近五年間の共犯事件の構成割合をしめしたのがIII-11表である。

III-11表 共犯事件数の推移(昭和34〜38年)

 この表でみると,昭和三四年には共犯事件総数に対する少年共犯事件の割合は三六・九%,成人共犯事件は四九・四%で,後者が約半数をしめていた。しかし,その後少年共犯事件の割合が上昇し,反対に成人共犯事件の割合が減少している。昭和三八年では全共犯事件のうち少年共犯事件の割合は五〇・九%に達し,全共犯事件の半数以上が少年によってしめられるようになっている。このことは,最近の少年犯罪が集団化しつつあることを示すものではあるまいか。
 次に,少年事件総数(成人との共犯事件はふくまない)のうちの共犯事件数の割合(%)と,成人事件総数(少年との共犯事件はふくまない)のうちの共犯事件数の割合(%)を主要罪種別に対比してしめすと,III-12表のとおりである。

III-12表 少年,成人別主要罪種別共犯事件の割合(昭和34〜38年)

 右の表でみると,昭和三八年では少年事件総数のうちに共犯事件のしめる割合は二七・九%であり,成人事件のそれは,九・九%である。年次別にみると,少年事件のうちの共犯事件の割合は年を追ってやや上昇傾向にあるのに対して,成人事件では横ばいまたは減少の傾向にある。
 罪種別に少年事件のうち共犯の割合の高いものをみると,強盗(四〇・四%),恐かつ(三四・〇%),強かん(三三・三%),窃盗(三一・一%)などである。
 これに反して,放火(四・五%),殺人(一〇・四%)などは共犯割合は低い。なお,強かん,窃盗などにおいて,成人にくらべて,少年の共犯割合がとくに高い。