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 昭和40年版 犯罪白書 第三編/第一章/三/2 

2 刑法犯少年年令層別,罪種別検挙人員の推移

 刑法犯少年検挙人員数の最近六年間の推移を年令層別人口比によってみるとIII-6表のとおりである。

III-6表 刑法犯少年年令層別検挙人員の人口比の推移(昭和34〜39年)

 まず昭和三四年について,各年令層別に人口比(各年令層別人口一,〇〇〇人に対する検挙人員の割合)をみると,一四-一五才では一〇・〇,一六-一七才では一二・〇,一八-一九才では一五・一と,年長になるにつれて比率が高くなっている。この傾向は昭和三九年についてもほぼ同様で,一四-一五才では一四・一,一六-一七才では一四・五,一八-一九才では一七・八となっている。
 次に,各年令層に共通の現象として,昭和三四年の人口比に比べて昭和三九年の人口比が上昇の傾向を示してきている。しかし,その上昇傾向は,明らかに一様ではない。各年令層別に昭和三四年の人口比を基点(一〇〇)として昭和三九年までの増加指数を図示すると,III-4図のとおりである。

III-4図 刑法犯少年年令層別検挙人員の人口比の推移(昭和34〜39年)

 右の図が示すように,刑法犯少年検挙人員の年令層別指数の上昇傾向は,低年令層ほどいちじるしい。すなわち,一四-一五才の年令層においては,昭和三四年以後の六年間に四一%増加している。これに対して一六-一七才の年令層になるとその増加は二一%,一八-一九才の年令層では一八%と年令が高まるにつれて増加の割合は少なくなっている。これは,従来の犯罪白書で指摘しているように,犯罪少年についての特色的事実の一つとして年令が低年令に移行しつつあることを示すものである。
 このように年令層ごとに犯罪の増加傾向はことなっているが,罪種の面からみても年令層によって差異を生じている。そこでまず,昭和三九年における刑法犯少年年令層別主要罪種別の検挙人員を考察してみよう。
 III-7表でみると,まず一四-一五才の年令層では窃盗が大多数で,全体の七三・二%をしめている。その他には恐かつ六・八%,暴行六・三%,傷害五・一%が主なものである。一六-一七才の年令層になると窃盗のしめる割合は四四・五%となり,恐かつ,傷害,暴行などの罪種が七-一〇%をしめている。そして,強かんが三%程度みられる。また一八-一九才の年令層になると窃盗の割合はさらに減少して全体の二九%程度になり,傷害は一二%にまで上昇している。これでみると低年令層ほど窃盗のしめる割合は高く,年令が高まるにつれて暴行,傷害,強かんなどの粗暴な犯罪が増加する傾向が認められる。

III-7表 刑法犯少年主要罪種別年令層別検挙人員(昭和39年)

 つぎに,窃盗,暴行および傷害の三種の罪種について,最近数年間の年令層別の推移を考察してみよう。III-8表9表および10表は,右罪種別の検挙人員とその年令層の人口一,〇〇〇人に対する割合(人口比)を示したものであり,その指数は昭和三四年を基点にしている。

III-8表 窃盗少年年令層別検挙人員の推移(昭和34〜39年)

III-9表 暴行少年年令層別検挙人員の推移(昭和34〜39年)

III-10表 傷害少年年令層別検挙人員の推移(昭和34〜39年)

 まず窃盗を犯した少年についてみると,一四-一五才の少年では最近数年間の上昇率がいちじるしく,昭和三四年にくらべて,昭和三九年には約五〇%増加している。一六-一七才では最近数年間,上昇傾向をたどってはいるが,上昇率は一四-五才の少年ほどではなく,二五%の増加にとどまっている。さらに,一八-一九才の年令層をみると,昭和三四年以降,一,二年はやはり上昇傾向をとっていたが昭和三七年以来はほぼ安定的で,昭和三四年とほとんどかわりなくなっている。また,暴行を犯した少年についてみると,一四-一五才の年令層では昭和三六年頃まではとんと横ばい状態であったが,昭和三七年頃から急激に上昇しはじめ,昭和三四年からの六年間に当初の約三〇%の増加を示している。これに対して,一六-一七才および一八-一九才の年令層では,昭和三四年以降昭和三七年まで,多少の高低はみられるがほぼ横ばいといってよいであろう。さらに傷害を犯した少年についていえば,一四-一五才の年令層では,はじめやや下降するようにみえたが,この二,三年上昇傾向に転じ,昭和三四年にくらべれば一六%の上昇となっている。これに対して,一六才以上の年令層では何れも下降状態にあったところ,昭和三九年には,やや上昇傾向を示しているように思われる。
 このように,窃盗,暴行および傷害の罪種において,一四-一五才の年令層の少年の増加傾向は,他の年令層に比して明らかに大きく,非行年令の低下,いいかえれば義務教育時期にある少年の非行問題の一面として十分な関心がはらわれなければならない。
 つぎのIII-5図6図7図は右に述べた窃盗,暴行,傷害少年の罪種別年令層別検挙人員人口比の推移を理解の便のために図示したものである。

III-5図 窃盗少年年令層別検挙人員の人口比の推移(昭和34〜39年)

III-6図 暴行少年年令層別検挙人員の人口比の推移(昭和34〜39年)

III-7図 傷害少年年令層別検挙人員の人口比の推移(昭和34〜39年)