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 昭和40年版 犯罪白書 第一編/第二章/二 

二 交通犯罪

 交通犯罪とは,文字どおりには,広く交通に関する犯罪をいうのであるから,自動車のみならず陸海空のあらゆる交通機関に関する犯罪をさすことはいうまでもないが,今日,大きな社会問題として世人の注目を集めているのは,自動車交通に関する犯罪であるから,以下これに限定してのべることにする。
 自動車交通に関する犯罪の態様は,二つに大別される。一つは,主として刑法第二一一条(業務上過失致死傷および重過失致死傷)の規定に違反するものであり,他は,道路交通法の処罰規定に違反するものである。前者は刑法犯であり,後者はいわゆる行政犯であるが,そもそも,道路交通法は道路における危険を防止し,交通の安全と円滑を図ることを目的として,人身事故等の発生につながる恐れのある危険な運転行為を類型化し,その違反行為に対して刑罰をもって臨むことにより,事故防止のための防波堤的な役割を果すものであるから,後者についての取締りの励行は,やがて前者の発生防止に役だつという関係にあるものである。なお,事故の発生については,道路の不整備,交通信号および標識の不明確,自動車自体の構造的な欠陥などが,その要因をなしている場合もあるが,運転者および歩行者が道路交通法規を遵守するよう,いっそう努力することによって,事故発生件数を大幅に減少させる余地があるものと考えられる。そこで,このような観点から,上記二種の犯罪の現況等について,それぞれ検討することにしよう。