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平成24年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/1

第2節 刑務所出所者等の住居確保・福祉的な支援のための取組
1 総論

刑務所出所者等の再犯防止,改善更生を図る上で,生活環境は重要な意味を持つ。特に,刑事施設等を出所して社会に戻った際に,適当な住居や引受人が準備されていない場合,不安定な生活基盤や人的なサポートの欠如が,再犯や再非行に至る要因ともなり得る。そのため,刑事施設等に入所した者については,収容中の段階から,改善更生と社会復帰にふさわしい生活環境をあらかじめ整えるための措置(生活環境の調整)を講じている。この調整は,その者の家族や関係人に協力を求めるなどの方法で,釈放後の適切な住居や就業先の確保等を調整事項の中心に据えて行われている(第2編第5章第1節参照)。

生活環境の調整を実施することにより,多くの者が,釈放後は家族や知人のもとで,その支援を受けて社会復帰に取り組むこととなるが,少子高齢化や単身世帯の増加等の家族形態の変化と共に,受刑者集団自体が急速に高齢化していることもあいまって,引受人となる家族がなく,他に適切な引受人等も見つけられず,出所後の居所も定まらないまま満期釈放となる者も少なくない。

7-2-2-1図<1>は,平成23年の満期釈放者の帰住先を構成比で示したものであり,図中の「その他(47.5%)」は,出所の際に適当な帰住先を持たない者,出所の際に帰住先を明らかにしない者等が含まれており,その正確な割合は明らかではないが,満期釈放者の半数近くが,家族や知人,あるいは適切な施設等に帰住していないことがうかがわれる。


7-2-2-1図 出所受刑者の出所状況と再入者の再犯期間との関係
7-2-2-1図 出所受刑者の出所状況と再入者の再犯期間との関係

これを,平成23年の出所受刑者(出所事由が仮釈放又は満期釈放の者に限る。)全体で見ると,同年の仮釈放率は51.2%(2-5-1-1図参照)であることから,出所受刑者全体に占める満期釈放者で帰住先が「その他」の者の割合は,7-2-2-1図<2>のとおり,約4分の1(23.2%)であった(なお, 同年の仮釈放者の保護観察開始時の居住状況別構成比について,2-5-2-4図参照。)。

次に,平成23年の再入者について,前刑の出所日から再犯に至るまでの期間と前刑時の出所状況(出所事由及び帰住先)を見ると,7-2-2-1図<3>のとおりである。再犯期間が短いほど,再入者に占める満期釈放者の比率が高く,かつ,満期釈放者で帰住先が<1>図の「その他」に当たるものの比率が高い。

同年における出所受刑者と再入者は同一ではないが,満期釈放者で,出所の際に適当な帰住先を持たない者は,出所してから数箇月の再犯リスクが高いことがうかがわれる。

また,出所受刑者の再入所状況を出所事由別に見ると,満期釈放者の累積再入率は,仮釈放者よりも相当に高く,より早期に再犯に至っている(4-6-3-4図参照)。

これらを踏まえると,刑務所出所者等の帰住先を確保し,あるいは,適切な福祉的支援によりその者らの生活環境を整えることは,刑務所出所者等の再犯を防ぎ,安全・安心な社会を作る上で,重要な課題の一つといえる。刑務所出所者等で適切な住居を得られないなど更生にふさわしい生活環境が整えられない者に対しては,これまで更生保護施設が主に宿泊場所や食事の提供,生活指導等において大きな役割を担ってきたが,近年は更に更生支援のための機能強化が図られている。それに加え,住居確保等に向けた他の取組も開始されている。この節では,そうした近年の住居確保,福祉的支援のための取組を紹介する。