裁判所の通院決定又は退院許可決定を受けた者は,原則として3年間,指定通院医療機関(厚生労働大臣が指定する。)による入院によらない医療を受けるとともに,その期間中,保護観察所による精神保健観察に付される。精神保健観察は,継続的な医療を確保することを目的としており,社会復帰調整官が,対象者との面接や関係機関からの報告等を通じて,その通院状況や生活状況を見守り,継続的な医療を受けさせるために必要な指導や助言を行うものである。
精神保健観察の実施に当たって,保護観察所は,指定通院医療機関や都道府県,市町村等の精神保健福祉関係機関と協議して,対象者ごとに処遇の実施計画を定めている。この実施計画には,地域社会において必要となる医療,精神保健観察及び援助の内容・方法等が記載されている。具体的には,地域処遇の目標,対象者の希望等のほか,医療に関しては,通院医療,訪問看護,デイケアの予定等,精神保健観察に関しては,対象者との接触方法等,援助に関しては,利用する精神保健福祉サービス等の内容・方法等が記載されており,各関係機関はこれに基づき,相互に連携を図りながら処遇を実施している。
また,処遇の経過に応じて,保護観察所は,関係機関の担当者を集めて「ケア会議」を開催し,処遇の実施状況等の情報を共有して処遇方針の統一を図るとともに,処遇実施計画についても必要な見直しを行っている。
精神保健観察事件の処理状況の推移は,4-5-3-5図のとおりであり,平成22年の開始(移送によるものを除く。)件数は213件(このうち退院許可決定によるものは151件),同年末現在の係属件数は524件であった。
期間満了を除く医療の終了や指定入院医療機関への(再)入院についても,裁判所が審判により決定する。平成22年における医療終了決定は56件,(再)入院決定は5件であった(司法統計年報による。)。