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平成22年版 犯罪白書 第7編/第2章/第1節/2

2 調査対象者の属性等

(1)国籍

調査対象者(1,021人)のうち,外国人は,82人である。国籍等別に見ると,韓国・朝鮮(32人),中国(台湾を含む。12人),フィリピン(8人),ブラジル(6人),タイ(5人)の順であり,罪名別には,殺人23人,傷害致死4人,強盗41人,強姦12人,放火2人である。

(2)年齢

調査対象者の本件犯行時の年齢(平均)は,殺人41.3歳,傷害致死34.0歳,強盗34.5歳,強姦29.7歳,放火41.1歳であった(平成8年の入所受刑者全体では39.6歳。法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。また,本件犯行時の年齢層別構成比を見ると,29歳以下の若年者層の構成比は,強姦で60.7%,傷害致死で46.1%,強盗で44.4%と高く,放火は25.4%,殺人は21.0%であり(同年の入所受刑者全体では26.2%。矯正統計年報による。),他方,65歳以上の高齢者層の構成比は,殺人で4.6%,放火で4.5%と比較的高く,傷害致死は1.3%,強盗は1.1%,強姦は0.4%であった(同年の入所受刑者全体では2.3%。矯正統計年報による。21年の入所受刑者全体については2‐4‐1‐5図参照)。

なお,65歳以上の高齢で出所した者の比率は,殺人で8.8%,放火で6.0%であった。

(3)犯行時の就労・居住状況

7‐2‐1‐2‐1表は,本件の罪名ごとに,調査対象者の犯行時の就労状況を見たものである。調査対象者(就労状況が不詳の者を除く。)に占める無職者の比率は,強盗で59.9%であるが,放火は49.3%,殺人は44.3%,傷害致死は39.2%であり,強姦は29.9%と低い(平成8年の入所受刑者全体では56.4%。矯正統計年報による。)。

7‐2‐1‐2‐1表  犯行時の就労状況別人員(罪名別)

また,本件の罪名ごとに,犯行時の居住状況を見ると,調査対象者に占める住居不定の者の比率は,強盗で32.2%,放火は20.1%であり,殺人,傷害致死及び強姦は1割程度であった(平成8年の入所受刑者全体では23.1%。矯正統計年報による。)。

(4)前科

7‐2‐1‐2‐2表は,調査対象者のうち,前科(罰金以上のものに限り,自動車運転過失致死傷・業過及び交通法令違反のみの犯行によるものを除く。以下この編において同じ。)を有する者の人員並びに前科数及び前科の罪種を本件の罪名ごとに見たものである。

7‐2‐1‐2‐2表  前科の状況別人員(罪名別)

有前科者率(調査対象者に占める前科を有する者の比率)は,殺人46.6%,傷害致死44.7%,強盗45.7%,強姦39.3%,放火49.3%であり,殺人,傷害致死,強盗及び放火では,3犯以上の有前科者率は2割を超え,6犯以上の有前科者率も1割程度であった。

重大事犯(殺人,傷害致死,強盗,強姦及び放火)による前科の有前科者率は,10.1%(殺人)〜16.4%(放火)であり,同種重大事犯(本件の罪名と同一罪名の犯罪。殺人と傷害致死は相互に同一罪名の犯罪であるとする。)による前科に限ると,有前科者率は高くはないものの,殺人で6.3%,傷害致死で6.6%,強盗で7.7%,放火で11.2%の者が同種重大事犯による前科を有していた。強姦でも,同種重大事犯(強姦)による前科の有前科者率は11.1%であり,強制わいせつを含めた性犯による前科の有前科者率は,13.1%であった。

重大事犯以外の罪種による前科を見ると,粗暴犯及び財産犯による前科を有する者が多く,殺人及び傷害致死では,粗暴犯による前科の有前科者率が,それぞれ,27.3%(殺人及び傷害致死による前科を含むと29.0%),28.9%(同32.9%)であり,強盗では,財産犯による前科の有前科者率が33.1%(強盗による前科を含むと34.2%),放火でも,財産犯による前科の有前科者率が27.6%(同28.4%)であった。

7‐2‐1‐2‐3図は,殺人及び傷害致死について,本件犯行が親族に対する犯行である者とそれ以外の者に対する犯行である者ごとに,前科数別構成比及び粗暴犯(殺人及び傷害致死を含む。)による前科数別構成比を見たものである。殺人でも傷害致死でも,本件犯行が親族に対する犯行である者は,そうでない者と比べ,複数の前科を有する者の比率及び粗暴犯(殺人及び傷害致死を含む。)による前科を有する者の比率が顕著に低く,親族に対する殺人及び傷害致死は,犯罪性があまり深まっていない者や粗暴な性向が必ずしも強くはない者による犯行も比較的多いことを示唆している。

7‐2‐1‐2‐3図  前科数別構成比(主たる被害者の種別)

(5)心神耗弱の認定

心神耗弱が認定された者の人員は,殺人6人(2.5%),傷害致死2人(2.6%),強盗4人(1.1%),強姦1人(0.4%),放火10人(7.5%)であり,放火でやや多かった。

(6)示談の状況

裁判時点における示談の状況を本件の罪名ごとに見ると,7‐2‐1‐2‐4表のとおりである。示談が成立していた者の比率は,放火では10%程度,殺人及び傷害致死では15%程度であり,強盗及び強姦では20%台であった。

7‐2‐1‐2‐4表  示談の状況別人員(罪名別)