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平成22年版 犯罪白書 第2編/第6章/第4節/2

2 法制度整備支援

我が国では,1994年以来,政府開発援助(ODA)政策の一つとして,アジアの開発途上国等を対象に法制度整備支援活動を展開してきた。

この活動は,開発途上国等に対する,法令案作成,法令運用に必要な制度・体制の整備,これらに従事する法律専門家の人材育成に関する支援等を行うものである。

開発途上国において,「法の支配」が確立し,法制度が適切に機能することにより,その国の政治・社会・経済が安定するとともに,持続的な発展が可能となり,ひいては地域の安定・発展につながる。これは,今日,国際的な相互依存関係が一層深まる中で,我が国の安全と発展にとっても欠くことのできない前提条件である。このような理由から,近時,同支援の重要性が一層強く認識されるようになっている。その重要性は,司法制度改革審議会意見書(2001年)及び政府開発援助大綱(改訂版・2003年閣議決定)においても指摘され,政府開発援助に関する中期政策(2005年閣議決定)の中でも,その必要性が明示されている。また,内閣の海外経済協力会議においても,2008年,同支援の重要な意義にかんがみ,これを戦略的に推進していくべきことが確認され,2009年には「法制度整備支援に関する基本方針」が承認されている。さらに,2008年のG8司法・内務大臣会議において採択された総括宣言でも,司法制度及び基本法の整備,法曹養成といった司法分野における技術支援の重要性が明言されている。

我が国の具体的な支援活動の多くは,独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する開発途上国に対する技術協力プロジェクトの枠組みの中,法務省においてこれを専門に担当する法務総合研究所国際協力部が中心となって実施している。

刑事司法の分野では,検察官が民商事法事件の審理にも立ち会う権限があるベトナム及びラオスの最高人民検察院を対象として,検察官の実務改善と能力向上を目標に「検察官マニュアル」の作成とその普及活動等を手がけてきた。さらに,ベトナムについては,現在進行中のプロジェクトにおいて,現地滞在の長期専門家(国際協力部派遣の検事)を中心に,刑事裁判実務の現状を分析し問題点を洗い出して,その解決策を提示することにより,実務の改善と裁判官・検察官等の能力向上を目指す活動をしている。また,前記「検察官マニュアル」の続編(上訴審における検察官の活動に関するもの)の執筆支援を行うほか,ベトナム刑事訴訟法改正支援の一環として,最高人民検察院の法案起草担当職員に対し刑事訴訟制度の在り方に関する研修等を実施している。なお,ラオスについては,2010年の新たなプロジェクトの中で,刑事訴訟法のモデル教材作成の支援活動が予定されている。

そのほか,2009年度には,東ティモールの司法省幹部職員に対し法案起草能力の向上を目指す研修を実施しており,同国の要望で,逃亡犯罪人引渡し及び薬物取締りに関する法令を題材としている。2010年度には,ネパール政府の要望に基づき,「刑事司法改革改善委員会」の委員を対象に刑事訴訟制度の比較をテーマとした本邦研修も行っている。