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 平成21年版 犯罪白書 第7編/第3章/第2節/4 

4 刑事手続上の処分等に対する意識

 調査対象者は,いずれも,再犯を繰り返した末に実刑に至った者であり,それまでの過程において,執行猶予判決を受け,保護観察に付されるなどの処分を受けていることが多いが,本調査では,調査対象者がこれらの処分等をどのように受け止めていたかについても質問調査を行った。
 まず,過去に,本件と同一の罪名による犯罪で,執行猶予判決を受け,又は仮釈放されたことがある者について,単純執行猶予若しくは保護観察付執行猶予の期間中であること,又は仮釈放中であることを意識していなかった者の比率を見ると,7-3-2-4-1図のとおりである。
 単純執行猶予判決を受けた者では,「初めからあまり意識していなかった」,「初めのうちは意識していたが,次第に意識しなくなった」と安易に受け止めていた者が半数を超え,保護観察付執行猶予者(窃盗受刑者36.9%,覚せい剤受刑者50.0%),仮釈放者(窃盗受刑者21.3%,覚せい剤受刑者22.2%)でも,その比率は相当高かった。

7-3-2-4-1図 窃盗・覚せい剤 執行猶予・仮釈放に対する意識

 次に,過去に本件と同一の罪名の犯罪により保護観察(保護観察案付執行猶予又は仮釈放による保護観察に限る。以下,この項において同じ。)を受けていた者が,その際の遵守事項や生活行動指針の遵守状況をどのように評価しているかについて,その回答結果を見ると,7-3-2-4-2図のとおりである。
 遵守事項等を「守れなかった」と回答した者は,仮釈放者では,約2割であったが,保護観察付執行猶予者では,半数を超えていた。

7-3-2-4-2図 窃盗・覚せい剤 遵守事項等の遵守状況別構成比

 さらに,保護観察の遵守事項等を「守れなかった」と回答した者について,その理由の回答結果を選択率で見ると,7-3-2-4-3図のとおりである。
 「守っていなくても,執行猶予が取消しになるようなことはないと思っていたから」,「遵守事項の内容を忘れていたから」など,安易に考えていた者が多い。

7-3-2-4-3図 窃盗・覚せい剤 遵守事項等を遵守できなかった理由

 7-3-2-4-4図は,覚せい剤取締法違反による保護観察中に簡易薬物検出検査の受検歴があった者について,同検査に対する感想を選択率で見たものである。
 「周りの人に,覚せい剤をやっていないことが分かってもらえて良かった」(57.3%),「使用していないという結果がはっきり出ることで,自信が付いた」(45.6%),「覚せい剤をやりたいという気持ちを抑えてくれた」(38.8%)の順で肯定的な感想が多いが,「いつも疑われているようで,嫌だった」(33.0%),「保護観察所へ行くのが面倒だった」(26.2%),「あまり意味はないと思っていたが,仕方なく受けていた」(17.5%)の順で否定的・消極的な感想もあった。

7-3-2-4-4図 覚せい剤 保護観察中の簡易薬物検出検査に対する感想