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 平成21年版 犯罪白書 第7編/第2章/第4節/2 

2 保護観察対象者の再処分等の状況

 7-2-4-4表は,保護観察対象者(各年に保護観察が終了した者に限る。)の再処分率・取消率等の推移(最近20年間)を見たものである。
 この項において,再処分率とは,保護観察終了人員に占める保護観察期間中に再犯を犯して刑事処分等を受けた者(刑事裁判を受けた者については,その裁判が確定した者)の人員の比率を,取消率とは,保護観察終了人員に占める保護観察期間中の遵守事項違反又は再犯により仮釈放又は保護観察付執行猶予を取り消された者の人員の比率を,取消再処分率とは,保護観察終了人員に占める刑事処分等を受け,又は仮釈放等を取り消された者の人員(双方に該当する場合は1人として計上される。)の比率をいう。
 ところで,後記のとおり仮釈放者の再処分率は極めて低いが,これは,仮釈放者は,保護観察期間中に再犯を犯すと,刑事裁判を受けることとなる場合が多いところ,保護観察期間が短いため,その期間が満了するまでに刑事裁判が確定するに至らないことが多いことに大きな原因がある。もっとも,仮釈放者が保護観察期間中に再犯を犯した場合,遵守事項違反による仮釈放の取消しの措置が執られることが多い。そこで,仮釈放者の再犯状況の実態を知るためには,取消率についても見る必要があるので,この項においては,必要に応じ,取消率や取消再処分率についても見ていくこととする。
 最近20年間,再処分率は,仮釈放者については1%前後で推移しているが,ここ2,3年は,低下傾向にある。保護観察付執行猶予者については30%前後から30%台後半の間で推移している。取消率は,仮釈放者については,平成15年までは6%台後半から7%台で推移していたが,16年に6%台前半に低下し,20年は4.5%であった。保護観察付執行猶予者については,8年から30%以上で推移していたが,19年,20年は20%台後半に低下した。

7-2-4-4表 保護観察終了者の再処分率・取消率等の推移

 7-2-4-5表は,平成11年から20年までの間,各年に保護観察に付された者について,仮釈放又は保護観察付執行猶予の取消状況を見たものである。
 平成11年から15年の間に保護観察に付された者について見ると,保護観察に付された日から5年以内に,仮釈放を取り消された者の比率は7%前後であり,保護観察付執行猶予を取り消された者の比率は30%を超えている。

7-2-4-5表 仮釈放・保護観察付執行猶予の取消状況

 保護観察対象者(各年に保護観察が終了した者に限る。)の取消再処分率の推移(最近10年間)を年齢層別に見ると,7-2-4-6図のとおりである。
 仮釈放者では,平成15年以降,50〜64歳の者の取消再処分率が最も高く,保護観察付執行猶予者では,20〜29歳の者について,取消再処分率が一貫して最も高く,20年には38.8%の者が再処分を受け,又は保護観察付執行猶予を取り消されている。
 また,仮釈放者の取消再処分率は,基本的に低下傾向にある。しかしながら,65歳以上の高齢者の保護観察付執行猶予者の取消再処分率は,年により変動はあるものの,大幅な上昇傾向を示しており,平成20年は11年と比べて9.2pの上昇であった。

7-2-4-6図 保護観察終了者の取消再処分率の推移(年齢層別)

 保護観察終了者の取消再処分率の推移(最近10年間)を罪名別に見ると,7-2-4-7図のとおりである。
 仮釈放者は,窃盗で取消再処分率が最も高く,保護観察付執行猶予者は,覚せい剤取締法違反及び窃盗で取消再処分率が比較的高い。

7-2-4-7図 保護観察終了者の取消再処分率の推移(罪名別)

 7-2-4-8図は,保護観察対象者(平成11年〜20年に保護観察が終了した者に限る。)について,就労状況別に,取消再処分率を見るとともに,再処分を受け,又は仮釈放等を取り消された者について,再処分等までの期間別構成比を見たものである。
 仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のいずれについても,無職者の取消再処分率は,有職者のそれを大きく上回っている。また,無職者は,有職者と比べ,仮釈放者では6月以内,保護観察付執行猶予者では3年以内に再処分等を受けた者の構成比が高い。

7-2-4-8図 保護観察終了者の取消再処分状況(就労状況別)