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2 少年院での処遇 (1)処遇の個別化と分類処遇少年院では,在院者一人一人の個性,長所,進路希望,心身の状況,非行の傾向等を十分考慮し,個別的必要性に応じた処遇(処遇の個別化)を行っている。 また,処遇の個別化を実現するため,在院者一人一人について科学的な調査を行い,共通の特性及び教育上の必要性を有する者ごとに集団を編成し,それぞれの集団に最も適切な処遇(分類処遇)を行っている。さらに,改善進歩の段階に応じて処遇目標,内容及び方法を設定して処遇しており,在院者の向上意欲を喚起し,自発的な努力により,改善進歩の効果を上げさせようとしている。 少年院の処遇は,新入時教育,中間期教育及び出院準備教育の三期の教育過程に区分し,それぞれの期に応じた教育目標や教育内容を設定している。在院者の処遇段階は,1級,2級及び3級に分け,1級及び2級を更に上・下に分けている。入院者は,まず,2級下に編入し,その後,改善進歩に応じて各段階に移行させる。 (2)少年院の種類及び処遇区分 少年院では,入院者の特性及び教育上の必要性に応じて,[1]少年院の種類,[2]処遇区分,[3]処遇課程により,在院者を分類・編成している。 ア 少年院の種類 少年院には,次の[1]から[4]までの種類があり,それぞれ,少年の年齢,犯罪的傾向の程度及び心身の状況に応じて,以下の者を収容する。 [1] 初等少年院 心身に著しい故障のない,おおむね12歳以上でおおむね16歳未満の者 [2] 中等少年院 心身に著しい故障のない,おおむね16歳以上で20歳未満の者 [3] 特別少年院 心身に著しい故障はないが,犯罪的傾向の進んだおおむね16歳以上で23歳未満の者。ただし,16歳未満でも,少年院収容受刑者は,収容することができる。 [4] 医療少年院 心身に著しい故障のある,おおむね12歳以上で26歳未満の者 イ 処遇区分 少年院には,行政運営上の収容期間を定めた処遇の類型として,処遇区分が設けられている。少年院の処遇区分には,短期処遇と長期処遇とがあり,さらに,短期処遇は,一般短期処遇と特修短期処遇とに区分される。初等少年院及び中等少年院における処遇は,短期処遇又は長期処遇として実施され,特別少年院及び医療少年院における処遇は,長期処遇として実施される。 これらの処遇区分は,それぞれ以下の者を対象としている。 [1] 一般短期処遇 早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的,集中的な指導と訓練により,その矯正と社会復帰を期待できる者(収容期間は原則として6月以内) [2] 特修短期処遇 [1]に記載の者に該当する者であって,非行の傾向がより進んでおらず,かつ,開放処遇に適するもの(収容期間は4月以内) [3] 長期処遇 短期処遇になじまない者(収容期間は原則として2年以内) 平成20年における入院者の少年院の種類・処遇区分別の人員は,4-2-4-8表のとおりである。 4-2-4-8表 少年院入院者の人員(少年院の種類別・処遇区分別) ウ 処遇課程処遇課程の種類・対象者及び平成20年における入院者の処遇課程等別の人員は,4-2-4-9表のとおりである。 4-2-4-9表 少年院入院者の人員(処遇課程等別) (3)教育の内容ア 生活指導 生活指導では,[1]非行にかかわる意識,態度及び行動面の問題,[2]資質,情緒等の問題,[3]情操のかん養,[4]基本的生活習慣,遵法的・自律的生活態度及び対人関係,[5]保護環境(家族関係,交友関係等)上の問題,[6]進路選択,生活設計及び社会復帰への心構えについて,面接指導,作文指導,日記指導,ロールレタリング(役割交換書簡法)等の方法を用いて,教育が行われている。 また,在院者が自らの非行と向き合い,自己の行為の重大性や被害者の心情等を認識し,被害者に誠意をもって対応していくことを目的とした,「被害者の視点を取り入れた教育」のプログラムが充実・強化されている。 イ 職業補導 現在,少年院で実施している職業補導の主な種目は,溶接,木工,土木建築,建設機械運転,農業,園芸,事務,介護サービス等である。 平成20年における出院者のうち,在院中に,職業補導種目に関連して資格・免許を取得した者は44.9%,職業補導種目に関連なく資格・免許を取得した者は50.7%であり,その取得者の資格・免許種目別構成比は,4-2-4-10図のとおりである。 4-2-4-10図 少年院出院者の取得資格・免許種目別構成比 平成18年度から,法務省は,厚生労働省と連携し,総合的就労支援対策を実施しているが,少年院でも,その一環として,在院者に対して,公共職業安定所の職員による職業相談等を実施している(第7編第4章第1節3項(1)参照)。ウ 教科教育 在院者のうち,義務教育未修了者及び高等学校教育を必要とし,それを受ける意欲が認められる者については,教科教育課程に編入して教科教育を実施している。それ以外の在院者に対しても,補習教育として,社会生活に必要な基礎学力及び進学・復学のための学力養成等,在院者の必要性に応じて教科教育を行っている。学校等に委嘱して義務教育や高等学校教育を実施する院外委嘱教科教育を実施している施設もある。平成20年における出院者のうち,出院後に中学校又は高等学校に復学した者は,それぞれ142人,130人であり,在院中に中学校の修了証明書を授与された者は,316人であった(矯正統計年報による。)。 なお,平成19年度からは,少年院内において,高等学校卒業程度認定試験を実施している。20年度の受験者数は326人,合格者数は,高卒認定合格者が88人,一部科目合格者が227人であった(文部科学省生涯学習政策局の資料による。)。 エ 保健・体育 保健に関しては,在院者の入院前の非行の内容や生活実態等を考慮しながら,少年院の医師,医務課職員等が,疾病予防の知識の付与等,健康管理能力を向上させるための指導を行っている。 体育に際しては,様々な運動種目を通じて,在院者の基礎体力の向上並びに集中力,忍耐力及び持久力のかん養を図るとともに,集団競技等により,ルールを守る態度や対人関係における配慮等が身に付くような指導に留意している。 オ 特別活動 少年院では,[1]自主的活動,[2]院外教育活動,[3]クラブ活動,[4]レクリエーション,[5]行事といった特別活動が行われている。 このうち,自主的活動として,ほとんどの少年院において,在院者に日直,図書係,整備係,レクリエーション係等の役割を担当させ,自主性,協調性等をかん養しているほか,集会,ホームルーム,機関誌の作成等も行われている。 院外教育活動としては,社会奉仕活動,社会見学等が実施されている。また,社会奉仕活動としては,福祉施設でのボランティア活動や近隣の公園,公共施設等の清掃・美化活動等を実施している少年院が多い。 (4)医療 平成20年における出院者のうち,在院中に治療を受けた者は,医療少年院で医療を受けた者も含め,1,115人(27.6%)であった。その疾患別の内訳は,「呼吸器系の疾患」の構成比が66.3%と最も高く,次いで,「精神及び行動の障害」(10.0%)であった(矯正統計年報による。)。 (5)保護者に対する措置等 少年の改善更生を図る上で,保護者の果たす役割は大きく,従来から,少年院においては,保護者に対する助言等を行ってきたところであるが,平成19年11月,少年院法が改正され,少年院の長は,保護者に対し,指導,助言その他の適当な措置を執ることができる旨,法律上明記された。 これを受け,少年院においては,在院者の保護者に対し,在院者の非行にかかわる問題等に適切に対処できるよう指導又は助言を行うほか,矯正教育に関する情報の提供や保護者講習会を実施するなどしている。 (6)処遇に関する民間の協力・援助 少年院では,多くの場面で,篤志面接委員,教誨師,更生保護女性会員,BBS会員等,社会の広範な各層の人々が民間ボランティアとして支援活動を行っている。 篤志面接委員は,在院者に対し,精神的悩みについての相談・助言,教養指導等を行っており,平成20年12月31日現在,648人を少年院の篤志面接委員として委嘱している(法務省矯正局の資料による。)。 教誨師は,在院者の希望に応じて宗教教誨を行っており,平成20年12月31日現在,376人を少年院の教誨師として依頼している(法務省矯正局の資料による。)。 更生保護女性会員,BBS会員等は,定期的に少年院を訪問し,誕生会,観桜会,成人式等の施設行事に参加したり,在院者と一緒にゲームやスポーツを楽しんだり,在院者の意見発表会の審査員を務めるなど,様々な形で少年院の処遇を支援しており,これらの人々との触れ合いは,在院者にとって,更生に向けた大きな励みとなっている。 |