第4節 刑事司法分野における研修協力・法制度整備支援等
1 国連アジア極東犯罪防止研修所における研修協力等
国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders。以下「アジ研」という。)は,国連と日本国政府により,その間の協定に基づき,アジア・太平洋地域をはじめとする諸国の刑事司法関係の実務家に対する研修及び調査研究を行うことを目的として設置され,1962年から共同で運営されている。
アジ研では,刑事司法分野における国連の優先事項及び研修対象国のニーズ等を考慮し,国際組織犯罪対策,汚職対策,非行少年処遇等をテーマとして,国際研修,国際高官セミナー及び汚職防止刑事司法支援研修を実施しているほか,特定の国や地域を対象とするものとして,中国刑事司法幹部研修,ケニア非行少年処遇制度研修,中央アジア刑事司法制度研修及びフィリピン保護司制度活性化研修を実施している。また,2007年からは,東南アジア諸国のためのグッドガバナンスに関する地域セミナーを海外で開催し(同年及び2008年はタイで開催。2009年はフィリピンで開催予定。),2008年12月には,これまでの2回の地域セミナーの成果を踏まえ,中国及び韓国を含めた各国高官を我が国に招へいし,最高検察庁と共同で,グッドガバナンス推進に向けた取組を強力に進めることを確認する会議を開催した。2009年6月までにこうしたアジ研のプログラムに参加した刑事司法関係者(いわゆる同窓生)は,我が国を含む120以上の国と地域から,4,000人以上に上っている(アジ研の資料による。)。
アジ研では,これら同窓生に対し冊子やメールマガジンを配信し,あるいは同窓生を後年他の研修の客員専門家(講師)として招へいするなどの方法で,強固な人的ネットワークの構築・維持に努めている。同窓生の中には,それぞれの国において,法務大臣,検事総長,最高裁判所長官その他の高位高官に昇進した人物も多数含まれており,犯罪の国際化が進む中,我が国が刑事司法分野における国際協力を推進していく上での大きな財産となっている。
国際組織犯罪や汚職といった社会に深刻な影響を及ぼす犯罪の抑制及び刑事司法の運営の適正化・効率化は,司法制度の体制がぜい弱な開発途上国において重大な関心事となっている。2008年6月に東京で開催されたG8司法・内務大臣会議においても,国際組織犯罪及び国際テロに対するより効果的な法制度及び法執行能力を整備する上で,助力を必要とする国に対するキャパシティ・ビルディング(能力向上)支援が重要であるとの認識が共有され,「キャパシティ・ビルディング支援に関するG8司法・内務閣僚宣言」が採択されたところであり,アジ研が研修等を通じて果たすべき役割は,ますます重要となっている。
|