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2 保護観察対象者に対する処遇 保護観察対象者の改善更生を図り,再犯防止を実現するため,以下のとおり,様々な施策が実施されている(「(少年の保護観察対象者を含む。)」と付記している事項は,仮釈放者及び保護観察付執行猶予者だけでなく,保護観察処分少年(家庭裁判所の決定により保護観察に付された者をいう。以下,この項,次項及び次節において同じ。)及び少年院仮退院者にも適用されるものである。)。(1)特別遵守事項の設定(少年の保護観察対象者を含む。) 特別遵守事項は,個々の保護観察対象者ごとに,それぞれの問題性に応じて定められるものであるが,平成18年9月の執行猶予者保護観察法の改正により,仮釈放者だけではなく,保護観察付執行猶予者についても定めることができるようになり,これは,20年6月施行の更生保護法にも引き継がれている。 具体的には,特別遵守事項として,例えば,労働に従事すること,犯罪性のある者と交際しないことなどが定められるほか,執行猶予者保護観察法改正後,性犯罪者に対して,性犯罪者処遇プログラムの受講を義務付けるようになり,さらに,更生保護法施行後は,一定の条件を満たす仮釈放者及び保護観察付執行猶予者について,性犯罪者処遇プログラム,覚せい剤事犯者処遇プログラム及び暴力防止プログラムを受けることを定めている。 これらのプログラムは,いずれも,認知行動療法等の専門的な知見に基づくものであり,保護観察対象者に犯罪に結び付くおそれのある認知の偏りや自己統制力の不足等の自己の問題性を理解させた上で,再犯に及ばないようにするための具体的な方法を習得させることにより,その改善更生を図ろうとするものである。 また,特別遵守事項は,更生保護法の施行により,保護観察の状況に応じて設定・変更ができるようになり,その必要性がなくなったときは取り消すものとされた。これにより,保護観察対象者の改善更生の状況に応じ,寛厳よろしきを得た,より弾力的な処遇が可能となっている。 (2)段階別処遇による体系的な保護観察の実施(少年の保護観察対象者を含む。) 段階別処遇とは,保護観察対象者の再犯可能性,改善更生の進度及び補導援護の必要性を的確に把握して,保護観察対象者を処遇の難易により区分した各処遇段階に編入し,問題性の深い保護観察対象者に対しては,より重点的に指導監督等を行い,その上で,処遇段階の変更,不良措置,良好措置等の措置を有機的に関連させることにより,体系的に保護観察処遇を行うものであり,この制度は,平成20年6月1日から実施されている。 なお,これにより,分類処遇制度(保護観察対象者を処遇の困難性に応じてA・Bに分類するもの)は廃止されたが,更生保護法の施行前に仮釈放を許された者など従前からの保護観察対象者には,なおこの制度が適用されている。 (3)類型別処遇制度(少年の保護観察対象者を含む。) 類型別処遇制度は,犯罪・非行の態様,特徴的な問題性等により保護観察対象者を類型化し,類型ごとの問題性等に応じて効果的な処遇を実施するものであり,平成2年に導入され,15年の類型項目の改正等を経て現在に至っている。 平成20年12月31日現在における仮釈放者及び保護観察付執行猶予者の主要な類型の認定状況は,2-5-2-5表のとおりである。 2-5-2-5表 保護観察対象者の類型認定状況 各類型の保護観察対象者に対しては,類型別処遇の実施方法等を定めた処遇要領に基づき処遇が実施されているほか,一部の保護観察所では,保護観察対象者に対する集団処遇や保護者・引受人を対象とする講習会が実施されている。平成20年度には,「覚せい剤事犯」類型保護観察対象者の引受人会(引受人に対する講習会)が,14庁において,延べ34回実施され,延べ415人の引受人が参加した(法務省保護局の資料による。)。(4)中間処遇制度 無期刑及び長期刑(執行すべき刑期が8年以上の刑をいう。以下,この項において同じ。)の仮釈放者については,円滑な社会生活への移行を図るため,仮釈放後の当初の1月間,更生保護施設に居住させて生活訓練等を計画的に実施する中間処遇制度があり,平成20年には,83人に対して実施された(法務省保護局の資料による。)。 (5)重点的に保護観察を行うべき者に対する効果的な処遇の実施(少年の保護観察対象者を含む。) 平成19年度から,長期刑の仮釈放者,凶悪重大な事件を起こした少年等重点的に保護観察を実施すべき者のうち,生活状態又は精神状態が著しく不安定になっている者など処遇に特段の配慮を要する者については,保護観察官が直接的関与を強めて指導監督・補導援護を実施することにより,その再犯防止を図っている。また,同年度から,仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のうち,対人暴力を反復する傾向を有し,問題飲酒類型等に該当するなど処遇上特に注意を要する者についても,保護観察官の関与を強化した綿密かつ専門的な処遇を実施している。 (6)被害者等の心情等伝達制度及びしょく罪指導プログラムの実施(少年の保護観察対象者を含む。) 心情等伝達制度とは,保護観察所が,被害者等の申出に基づき,その被害に関する心情や保護観察対象者の生活等に関する意見等を,保護観察対象者に伝達するとともに,これにより,保護観察対象者に自らの犯罪又は非行による被害の実情等を直視させて反省及び悔悟の情を深めさせ,その改善更生を図る制度である。 しょく罪指導プログラムとは,被害者のある重大な犯罪を犯した保護観察対象者に,所定の課題を実行させ,犯した罪の重さを認識させて悔悟の情を深めさせることにより,再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに,被害者等にその意向に配慮しながら誠実に対応するよう促すことを目的として実施するものである。 (7)就労支援等(少年の保護観察対象者を含む。) 平成18年度から,法務省は,厚生労働省と連携し,出所受刑者等の就労の確保に向けて,総合的就労支援対策を実施しているが,その枠組みの中で,保護観察所では,刑事施設・少年院及び公共職業安定所と連携し,計画的に保護観察対象者に対する就労支援を実施している(第7編第4章第1節3項(1)参照)。 また,自立更生促進センター等の設立が進められている。これは,適当な引受人がなく,かつ,民間の更生保護施設では受入れが困難な仮釈放者及び少年院仮退院者等の改善更生と自立を促進するため,保護観察所に附設した宿泊施設に宿泊させながら,保護観察官による濃密な指導監督や充実した就労支援を行うことで,その再犯を防止することを目的とする施設である。平成21年6月に,仮釈放者を対象とし,特定の問題性に応じた重点的・専門的な処遇を行う初の自立更生促進センターとして,北九州自立更生促進センター(定員男子14人)が運営を始め,同年9月には,仮釈放者等を対象として,主として農業の職業訓練を行う就業支援センターとして,茨城就業支援センター(定員男子12人)が運営を始めた(第7編第4章第1節3項(3)参照)。 |