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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/1 

第3章 高齢犯罪者の実態

第1節 犯歴調査

1 はじめに

 本節においては,高齢犯罪者の実態について,検察庁における電子計算機により把握している裁判(以下「電算犯歴」という。)の資料を対象とした分析結果を示すことによって,量的観点を中心とした高齢犯罪者の実情について述べる。
 電算犯歴には,我が国に本籍を有する自然人(明治以前の出生者を除く。)に対し,昭和23年(1948年)以降現在までの間に,我が国の裁判所が有罪の言渡しをして確定した裁判が登録されている。法務総合研究所においては,平成19年版犯罪白書(第7編第3章)作成時において,昭和23年(1948年)から平成18年(2006年)9月30日(以下「基準日」という。)までの間に確定したもののうち,刑法上の過失犯及び危険運転致死傷罪並びに特別法上の道路交通に係る犯罪の犯歴を除いたものから,初犯者・再犯者の区別をしない犯歴100万人(以下,本節において「100万人犯歴」という。)を,無作為に抽出した。当時,高齢犯罪者としては,この100万人犯歴から,昭和3年(1928年)から11年(1936年)生まれの者(以下,本節において「調査対象者」という。)を抽出し,これを対象に分析を行った(高齢犯罪者の犯歴に係る該当人員は22万9,089人,犯歴の件数は40万2,252件)。これにより,抽出された調査対象者は,ほぼ70歳以上の高齢犯罪者に限定される。その理由は,65歳になってから最低5年間(ほぼ70歳まで),犯歴の追跡期間を設定することが,高齢犯罪者の特質を研究する上で必要と考えたからである。その結果,調査対象者の中で,裁判確定時65歳以上の犯歴のあった,ほぼ70歳以上の者(以下,本節において「調査対象高齢犯罪者」という。)は,5,115人,犯歴の件数は5,924件であった。
 なお,本節において「初犯者」とは,有罪の確定裁判を1回だけ受けた者を,「再犯者」とは,有罪の確定裁判を2回以上受けた者をいう(再犯時の罪名は,前回確定裁判を受けた罪名と同一であることを要しない。)。また,「犯歴」とは,前科,すなわち有罪の確定裁判に関する記録のことをいう。この犯歴の件数は,一つの確定裁判ごとに一犯歴として数える。したがって,「総犯歴数」とは,一人の者が犯した犯歴の件数の合計を意味する。