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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/2 

2 起訴

 昭和63年には高齢者の一般刑法犯の起訴人員は887人,総起訴人員中の高齢者比は1.0%にすぎなかったが,平成19年には起訴人員は6,584人(20年間で5,697人(642.3%)増),高齢者比は6.4%(同5.4ポイント上昇)と大幅に増加・上昇している(検察統計年報による。)。
 一般刑法犯の男女別・年齢層別起訴人員の推移(最近20年間)は,7-2-2-3図のとおりである。
 高齢者の起訴人員の増加傾向は,男女ともに見られ,女子高齢者の起訴人員及び高齢者比も,昭和63年は86人,2.1%であったのが,平成19年には1,300人(20年間で1,214人(1,411.6%)増),13.1%(同11.0ポイント上昇)となっており,男子高齢者以上の著しい増加率・上昇率を示している。

7-2-2-3図 一般刑法犯の男女別・年齢層別起訴人員の推移

 高齢者の起訴人員の増加率も,高齢者人口の増加率を大きく上回っている。一般刑法犯起訴人員の年齢層別人口比の推移(最近20年間)は,7-2-2-4図のとおりである。

7-2-2-4図 一般刑法犯起訴人員の年齢層別人口比の推移

 高齢者人口10万人当たりの起訴人員は,昭和63年が6.4,平成19年が24.0であり,約3.7倍に上昇している。
 成人の場合,若い年齢層ほど単位人口当たりの起訴人員も高い傾向が認められ,いずれの年齢層でも,平成19年においては,昭和63年の水準を上回っているが,その増加率は高齢者層において最も高い。
 また,高齢者予備軍ともいうべき50〜64歳の年齢層については,前節で見たとおり,検挙人員及びその人口比が高齢者に準じて著しく増加・上昇していたが,こうした傾向は,起訴人員及びその人口比においても表れており,昭和63年がそれぞれ1万1,036人,50.3であったところ,平成19年にはそれぞれ2万1,217人(20年間で1万181人(92.3%)増),78.7(同28.4ポイント上昇)と,高齢者層ほどではないものの大幅に増加・上昇している。
 高齢者の罪名別起訴人員及び高齢者比の推移(最近20年間)は,7-2-2-5図のとおりであり,このうち,殺人,傷害,暴行及び窃盗の4罪名についての起訴人員の高齢人口比の推移(最近20年間)は,7-2-2-6図のとおりである。

7-2-2-5図 高齢者の罪名別起訴人員・高齢者比の推移

7-2-2-6図 罪名別起訴人員の高齢人口比の推移

 いずれの罪名についても,高齢者の起訴人員及び高齢者比ともに,昭和63年と比べて平成19年は大幅に増加・上昇しており,高齢者人口の増加率以上に起訴人員が増加している。
 平成19年の高齢者による一般刑法犯の罪名別起訴人員では,やはり窃盗が圧倒的に多く(3,687人,高齢者の一般刑法犯総起訴人員に占める構成比56.0%),傷害(583人,同8.9%),詐欺(402人,同6.1%),暴行(272人,同4.1%),横領(遺失物等横領を含む。(185人,同2.8%))と続く。
 なお,殺人については,高齢者比が他の罪名と比較して高い点が注目される。
 次に,殺人,傷害,暴行及び窃盗の4罪名につき,高齢者の起訴人員及び高齢人口比の推移を見ることとする。
 殺人については,昭和63年には高齢者の起訴人員が22人,高齢人口比が0.16であったのに対し,平成19年にはそれぞれ76人(20年間で54人(245.5%)増),0.28(同0.12ポイント上昇)となっている。
 傷害については,昭和63年には高齢者の起訴人員が73人,高齢人口比が0.53であったのに対し,平成19年にはそれぞれ583人(20年間で510人(698.6%)増),2.12(同1.59ポイント上昇)に増加・上昇している。このうち,399人(68.4%)は略式命令請求された者である。また,暴行については,昭和63年には高齢者の起訴人員が15人,高齢人口比が0.11であったのに対し,平成19年にはそれぞれ272人(同257人(1,713.3%)増),0.99(同0.88ポイント上昇)に増加・上昇している。このうち,219人(80.5%)は略式命令請求された者である。傷害及び暴行については,10年前後からの増加傾向が著しい(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
 窃盗では,平成18年,19年の高齢者の起訴人員の増加が特に目立つ。18年5月28日以降,窃盗に選択刑として罰金刑が導入され,高齢者の起訴人員のうち,18年は584人,19年は1,463人が略式命令請求された者であるが,その前後の公判請求分のみで比較しても,17年が1,855人,18年が2,039人,19年が2,224人と着実に増加している。そこで,窃盗については,公判請求分に限って高齢者の起訴人員及び高齢人口比の推移を見たところ,昭和63年には高齢者の公判請求人員が345人,高齢人口比が2.5であったのに対し,平成19年にはそれぞれ2,224人(20年間で1,879人(544.6%)増),8.1(同5.6ポイント上昇)に増加・上昇している(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
 前節で見たように,高齢者の犯罪については,比較的軽微な犯罪の増加が著しく,微罪処分や不起訴処分とされる犯罪が多くを占めていることは確かであろうが,同時に,起訴にまで至る犯罪についても,顕著な増加傾向が認められることに注意しなくてはならない。