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4 過去の研究(昭和59年版及び平成3年版犯罪白書)の概要 同白書は,60歳以上の者を高齢者と定義し,昭和49年から58年までの10年間において,高齢者に係る検挙人員の人口比の上昇率(1.32倍)が,検挙人員総数の人口比の上昇率(1.08倍)を上回っていることや,高齢者の比率が高い罪名は殺人,窃盗及び放火であること,窃盗の手口の多くは,万引き,自転車盗であることなどを指摘した。 各手続段階別に見ると,検察では,起訴猶予率が高齢者において相対的に高いこと,裁判では,第一審有罪人員の増加率が高齢者において相対的に高いこと,矯正では,高齢新受刑者は逐年増加し昭和58年には高齢者比は1.9%に至り,その中でも入所度数が多数回の者の比率が著しく高いこと,更生保護では,仮出獄(平成17年法律第50号により,「仮釈放」に改正。以下同じ。)者に係る保護観察新規受理人員が増加傾向にあることなどが指摘された。高齢者の犯罪被害については,高齢者の被害者数及び高齢者比はいずれも横ばいの状況にあること,被害罪名別では,強盗の被害者数及び高齢者比がともに上昇傾向にあることなどが指摘された。 高齢犯罪者が増えており,そのほとんどは軽微な窃盗であるが,一部に重大犯罪に及ぶ者もおり,入所度数が多い者も多く,高齢者の社会復帰や保護のための施策が重要となると提言した。 (2)平成3年版犯罪白書 同白書も,60歳以上の者を高齢者と定義し,昭和41年から平成2年までの四半世紀間で,交通関係業過を除く刑法犯検挙人員のうち,成人のみの年齢層別構成比において,高齢者比は2.9%から8.3%へと上昇したことなどが指摘された。 各手続段階別に見ると,検察では,業過を除く刑法犯の犯行時20歳以上の起訴人員中の高齢者比が上昇傾向にあり,平成2年で3.1%であった。 裁判では,公判請求人員の中で,高齢者が最も多い罪名は窃盗であり,次いで,詐欺,傷害,殺人の順となっており,窃盗及び詐欺については,第一審で実刑判決を受けた者の中で高齢者比が上昇しており,高齢化が進んでいることを明らかにした。 検察官の訴追裁量権の適切な運用によって,これまで起訴人員に占める高齢者比は低くコントロールされてきたが,将来,犯罪者の高齢化が進む中で検察官の適宜適切な裁量権の行使がますます重要となると指摘した。 矯正では,高齢化の傾向は,年末在所受刑者数に顕著に表れており,平成2年には高齢者比が5.0%となっている。これは,当時我が国より60歳以上の人口の比率が高いとされたスウェーデン,英国,ドイツ及びフランスと比較してもはるかに高く,我が国の刑事施設における高齢化がこれらの国々よりも進んでいることなどが判明した。 高齢犯罪者については,従来,多数の累犯者の中で見落とされがちであった初入受刑者の特質を明らかにしたことは,今後の処遇の参考資料となるとした上で,今後の課題に類型別の考察があるとした。高齢の累犯者だけでなく,若いころ長期刑で受刑し,受刑中に加齢して高齢者になった者,それまで善良な生活をしていたが,高齢になって生活破綻,人間関係のもつれ等を背景に犯罪を行い受刑した者など,幾つかの類型が考えられたので,そうした特質を踏まえた一層効果的な処遇方策を見出すことができようが,今後高齢受刑者について更なる調査が必要となることを提言した。 更生保護では,保護観察新規受理人員のうち仮出獄者,保護観察付執行猶予者ともに高齢化が始まっており,中でも仮出獄者の高齢化の程度が大きいことを指摘した。 犯罪被害者では,平成2年の交通関係業過を除く刑法犯の認知件数中,主たる被害者の中で60歳以上の高齢被害者の占める割合が最も高い罪名は,放火であり,次いで,詐欺,占有離脱物横領を除く横領,住居侵入,殺人,強盗などであることを明らかにした。 病弱・貧困などの問題を抱える者を援助することが高齢の保護観察対象者の処遇課題となり,保護観察所では,就職先確保,医療援助,福祉のサービスのあっせん等の配慮等について,関係機関と一層円滑な連携を深めることが推進されてきた。更生保護施設では,自立困難で在所期間が長期化する高齢者の増加が予想されたが,在所期間の長期化を避けることは,更生保護施設だけの努力では達成困難であり,更生緊急保護法の適用期間を延長することの当否の検討などについて指摘した。 |