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 平成20年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/2 

2 公判段階における被害者の保護等

 被害者が公判段階において証人として出廷し,証言することは少なくない。証人を保護するための制度として,証人尋問の際に,証人と被告人や傍聴人との間を遮へいする措置を採る制度,法廷と同一構内の別室に証人を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する方法(ビデオリンク方式)によって尋問する制度,適当と認める者を証人に付き添わせる制度がある(これら各制度を併用することもできる。)。
 また,裁判所は,被害者等から被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,原則として,公判期日において,その意見を陳述させるものとされている。
 このほか,刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者の間における当該被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には,共同して,この合意の内容を当該被告事件の公判調書に記載することを求める申立てをすることができる。これが公判調書に記載された場合には,その記載は裁判上の和解と同一の効力を有するため,被告人がその内容を履行しないときは,被害者等は別に民事訴訟を提起しなくとも,この公判調書を利用して強制執行の手続を執ることができる。
 公判記録については,従来,刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,被害者等から申出があり,損害賠償請求権の行使のために必要があるなど正当な理由があって相当と認める場合に限って,閲覧又は謄写をさせることができることとされていたが,平成19年6月27日に公布された犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成19年法律第95号。以下,本項において「被害者保護のための刑訴法等改正法」という。)により,その範囲が拡大され,同年12月26日から,被害者等については原則として閲覧又は謄写を認めることとされ,さらに,いわゆる同種余罪の被害者等についても,損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって相当と認めるときは,公判記録の閲覧又は謄写を認めることとされた。
 これらの諸制度の実施状況(最近5年間)は,5-2-1-3表のとおりである。

5-2-1-3表 公判段階における被害者保護制度等の実施状況

 不起訴事件記録については,原則として非公開とされている。ただし,被害者等が民事訴訟において被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために,実況見分調書,写真撮影報告書,検視調書等の客観的証拠が必要と認められる場合もあることから,検察庁では,関係者のプライバシーを侵害しないなど相当と認められる場合には,これらの証拠の閲覧又は謄写に応じている。また,民事裁判所に対して,一定の要件の下で,不起訴事件記録中の供述調書の開示や目撃者特定のための情報の提供を行っている。
 なお,被害者保護のための刑訴法等改正法では,刑事手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための制度も導入され,平成19年12月26日から施行されているほか,犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度や,犯罪被害者等による損害賠償請求について刑事手続の成果を利用する制度も創設され,20年12月1日から施行される。また,同年4月23日に公布された犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律(平成20年法律第19号)により,同年12月1日以降,被害者等が同制度に基づく事件手続への参加を弁護士に委託する場合には,その資力に応じ,国選被害者参加弁護士を請求することができることになった。