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 平成20年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/5 

5 詐欺等

 詐欺の認知件数は,平成14年以降年々大幅に増加し,17年に昭和35年以降で最多を記録した後,平成18年に減少に転じ,19年も前年より6,845件(9.2%)減少した。他方,検挙率は9年以降低下し続け,16年には32.1%と戦後最低を記録したが,翌年からは上昇に転じ,19年は41.3%(前年比0.9ポイント上昇)となった。
 近時の詐欺の急増要因の一つは,振り込め詐欺の急増である。振り込め詐欺(恐喝)とは,いわゆるオレオレ詐欺(恐喝)(親族を装うなどして電話をかけ,会社における横領金の補てん金等の名目で預貯金口座に現金を振り込ませるなどの方法による詐欺又は恐喝事件をいう。),架空請求詐欺(恐喝)(郵便,インターネット等を利用して,架空料金を預貯金口座に振り込ませるなどの方法による詐欺又は恐喝事件をいう。),融資保証金詐欺(実際には融資しないのに,融資するように装った内容の文書を送付するなどし,融資申込みをした者から保証金等の名目で預貯金口座に現金を振り込ませるなどの方法による詐欺事件をいう。)及び還付金等詐欺(税務署等を装い,税金の還付等に必要な手続を装って口座間送金をさせるなどの方法による詐欺事件をいう。)の総称である。
 平成19年における振り込め詐欺(恐喝)の認知件数,検挙件数,検挙人員,検挙率及び被害総額は,1-1-2-5表のとおりである。
 認知件数を手口別に見ると,オレオレ詐欺(恐喝)では,会社でのトラブル・横領金等の補てん金名目が2,725件と最も多く,次いで,サラ金等借金返済名目(2,025件)の順であり,架空請求詐欺(恐喝)では,有料サイト利用料金名目が1,446件と最も多かった(警察庁の資料による。)。

1-1-2-5表 振り込め詐欺(恐喝)の手口別認知件数・検挙件数・検挙人員・検挙率・被害総額

 関係機関により,被害防止のための広報啓発活動が行われるとともに,振り込め詐欺(恐喝)事件に使用される預貯金口座や携帯電話の不正な流通を防止するための取締りを強化するなどの各種対策が進められており,振り込め詐欺(恐喝)の認知件数は,ここ数年減少傾向にあったが,平成20年には,6月までの時点で既に1万件を優に超えており,再び増加する兆しが見られる。また,19年における振り込め詐欺(恐喝)の認知件数は,詐欺・恐喝全体の23.9 %を占めているところ,その検挙率は17.2%と,詐欺・恐喝全体の検挙率(42.8%)や窃盗を除く一般刑法犯の検挙率(43.9%)と比較して低い水準にあり,振り込め詐欺(恐喝)の発生防止及び検挙等は,緊急かつ重要な課題といえよう(警察庁の資料による。)。