前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成19年版 犯罪白書 第7編/第4章/第2節/2 

2 動機・原因

 殺人再犯者の初度・再度事犯別に,犯行動機・原因別人員及び犯行前に飲酒していた人員を見たのが,7-4-2-3図である。

7-4-2-3図 初度・再度事犯別の犯行動機・原因別等人員

 犯行動機・原因が「憤まん・激情」であった者が,初度・再度事犯のいずれにおいても最も多かった。
 ここで,初度・再度事犯別の犯行動機・原因ごとに,犯行前に飲酒していた者の比率を見ると,犯行動機・原因が「性的動機」の者が初度で8人中4人の50.0%,再度で6人中4人の66.7%と最も高く,次いで,「憤まん・激情」の者(初度37人中18人の48.6%,再度32人中21人の65.6%)であった。これらの事犯において,飲酒による酔いが殺人の直接の動機・原因となった事犯は見当たらなかったが,これが自制心を緩ませたり,気を大きくさせるといった間接的な形で,犯行に何らかの影響を与えていると認められる事犯は少なからず見受けられた。
 なお,犯行動機・原因が「暴力団の勢力争い」や「利欲目的」である者においては,犯行前に飲酒していた者はほとんどいなかった。
 次に,それぞれの殺人再犯者において,初度事犯の動機・原因別に,再度事犯の動機・原因別の構成比を見たものが,7-4-2-4図である。

7-4-2-4図 初度事犯の動機・原因別による再度事犯の動機・原因別人員構成比

 これによると,まず,それぞれの動機・原因ごとに,初度事犯の時と同じ犯行動機・原因で再度事犯を犯した者の比率(以下,本章において「動機同一率」という。)が,他のどの犯行動機・原因で再度事犯を犯した者の比率よりも高いことが注目される。特に初度事犯の動機・原因が「暴力団の勢力争い」の者においては,動機同一率が61.9%と極めて高く,また,「痴情」(52.9%),「報復・怨恨」(50.0%),「憤まん・激情」(40.5%),「検挙逃れ・口封じ」(40.0%),「利欲目的」(38.5%),「性的動機」(37.5%)においても動機同一率が相当高い。このように,殺人再犯者においては,そのうちの相当数が初度事犯と再度事犯とにおいて同一の犯行動機・原因により殺人を犯していた。
 なお,殺人事犯では,動機・原因が単一でないことがほとんどであることから,今回の調査では,初度・再度事犯別に,犯行動機・原因を主なものから順に三つまで重複選択して分析を行った。両事犯のいずれか又は双方でその一部を成す犯行動機・原因としては,「憤まん・激情」が74.2%と最も高く,次いで,「報復・怨恨」(48.8%),「利欲目的」(26.6%),「暴力団の勢力争い」(25.0%),「痴情」(21.9%),「アルコール酩酊」(21.9%),「検挙逃れ・口封じ」(18.0%),「性的動機」(10.9%)の順であった。