第4章 特別調査-殺人再犯者の実態
第1節 序説
1 特別調査の概要
前章においては,犯歴・統計によって再犯者の実態を見た。そこでは,特に件数の多い窃盗,傷害・暴行,覚せい剤取締法違反の各事犯に着目し,これらについて多方面からの考察を行った。
これに対し,本章では,重大事犯における再犯の代表として殺人事犯(殺人又は強盗殺人(未遂を含む。)をいう。以下,本章において同じ。)に着目し,再犯者がどのような動機や原因によって再度の犯行に至っているかを調査し,再犯防止に向けた対策を検討するための資料を得る目的で分析を行うこととした。
前章でも触れたように,殺人事犯については,同種事犯の再犯に至る比率は他の主な罪名と比べると極めて低い。しかしながら,殺人の再犯はその結果が重大であるとともに,社会に与える影響も大きい。
このような観点に基づき,法務総合研究所では,かかる重大犯罪の再犯の実態を明らかにし,再犯の防止対策を考察すべく,殺人事犯により刑事施設で受刑中であって,過去にも殺人事犯により受刑したことがあり,そのうちの1回以上は既遂事案である者(以下,本章において「殺人再犯者」という。)128人を抽出し,それらの者について特別調査を実施した。
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