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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第6章/4 

4 司法制度改革への対応

 次に,司法制度改革,取り分け裁判員制度を円滑に定着させるための方策について,一言する。裁判員制度の導入は,刑事司法の領域における改革として最も重要な改革であり,その円滑な定着は,刑事政策上も最重要の課題の一つである。
 裁判員裁判は,裁判の内容に国民の健全な社会常識を反映することによって,司法制度の国民的基盤を確立しようとする制度である。裁判員裁判が,司法制度の基盤としての役割を十分に果たすためには,国民が裁判員として裁判に参加することの意義等を理解,自覚した上で,積極的に裁判に参加することが必要である。
 そのためには,特に,刑事司法関係者が,国民と様々な場面で積極的に交流を行い,その中で,刑事司法の役割や機能,国民の司法参加の意義等について理解してもらうための努力を続けることが必要であろう。このため,刑事司法機関,刑事司法関係者が地域社会や地域住民との関わりをますます密接にし,その中で,広報活動,法教育等の方策を十分講じる必要があるが,他方において,国民の司法参加を円滑に実現するためには,刑事裁判自体が国民の目から見て分かりやすいものであることも重要であると思われる。
 刑事司法は,これまで主として法律の専門家によってその運用が担われてきたため,そこで用いられる専門用語をはじめとして,手続の進行等に関し,一般国民の目から見て分かりにくい点があるように思われる。裁判員制度が円滑に定着し,司法制度の基盤としての役割を十分に果たすためには,刑事司法関係者が,地域社会との関わりの中で,一般国民の視線を十分意識する必要がある。その上で,刑事司法の在り方を一般国民の目から見てより理解しやすいものに,できる限り改めていくことが重要であると思われる。