(3) 犯罪被害者等の権利の保護等 有効な犯罪抑止策をとることによって,社会の構成員,特に,子供,高齢者等の社会的弱者を犯罪の脅威から保護しなければならないが,ひとたび,犯罪の被害が発生した場合には,犯人を検挙し,所要の刑事手続に付することはもとより,その後の刑事,民事にわたる手続の様々な局面において,犯罪被害者等に対し,その尊厳にふさわしい処遇を保障し,その権利の保護が図られなければならない。刑事手続への関与の拡充の在り方について,犯罪被害者等基本計画の示す枠組みに沿って,我が国にふさわしい制度等の導入に向けて,鋭意検討が進められているし,平成18年10月から業務を開始した日本司法支援センターにおいても,犯罪被害者等の支援業務の取扱いが開始された。 捜査,公判の過程において,被害者のプライバシーに配慮し,二次被害が生じないよう慎重に留意しながら,犯罪被害の実態が十分に明らかにされるとともに,犯罪被害者等が加害者の処罰等に関し意見を述べる機会が十分保障され,その意見を適切に考慮しながら加害者に対する刑事処分が決定される必要がある。そして,加害者に対する刑事処分が決定した後の段階,例えば,刑事施設における改善指導や保護観察処遇においても,加害者を自己の犯した犯罪被害の実態,深刻さに向き合わせ,責任を自覚させるための教育が十分行われる必要がある。性犯罪者処遇プログラムにおいても,性犯罪による被害の重大さを自覚させ,被害者の気持ちを理解させるための教育プログラムが用意されている。 前記の「更生保護のあり方を考える有識者会議」の報告においては,地方更生保護委員会の仮釈放審理手続で犯罪被害者等の意見を聴取するための具体的方法・手続を明定し,意見を聴取した場合には,その後の同委員会の対応について理由を付するなどして犯罪被害者等に示すことが提言されている。このようなことを通じて,仮釈放審理においても,犯罪被害者等の意見を一層踏まえた仮釈放審理が行われることが望まれる。 今後とも,犯罪被害者等の視点に立って具体的施策を更に推し進めなければならない。また,加害者に対する処遇の各段階において,犯罪被害の問題に正面から向き合わせることが,加害者の真の改善,更生につながることに一層留意する必要がある。
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