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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第4章/第5節/1 

第5節 諸外国における性犯罪の動向と対策

1 フランス

(1) 性犯罪の概要

 刑法(Code penal)において,中心となる性犯罪の類型は,性的攻撃(agressions sexuelles)である。性的攻撃は,「暴力,強制,脅迫又は不意打ちをもって実行するすべての性的侵害」と定義され,強姦(viol),その他性的攻撃(autres agressions sexuelles,強姦以外の性的攻撃をいう。)及び性的ハラスメント(harcelement sexuel)の三つに区分される。
 15歳未満の児童に対する強姦等については,刑の加重規定が設けられている。

(2) 性犯罪の動向

 性的攻撃の認知件数の推移(最近10年間)は,6-4-5-1図のとおりである。
 性的攻撃の認知件数は,1995年から2002年まで,おおむね増加傾向にあったが,2003年以降は横ばいとなっている。

6-4-5-1図 性的攻撃の認知件数の推移(フランス)

(3) 性犯罪対策の概要

 フランスは,性犯罪の増加を受け,性犯罪の予防及び被害者の保護等を目的として,一連の法制度の整備を1990年代後半から進めている。そのうち注目すべきものを以下に紹介する。

ア 性犯罪者に対する社会司法追跡調査(Suivi socio-judiciaire)

 1998年の「性犯罪の予防及び処罰並びに少年の保護に関する法律」は,性犯罪者に対する社会司法追跡調査を導入した。社会司法追跡調査は,判決裁判所により言い渡される補充刑又は代替刑として,一定の性犯罪により有罪判決を受けた者に対し,定められた一定期間,刑罰適用判事(juge del'application des peines)の監督下で,再犯防止のための監視措置(転居の通知義務,特定の者との接触禁止,少年と日常的に接する職業への従事や社会的活動の禁止等をいう。)や援助措置(社会司法追跡調査対象者の社会復帰のための援助をいう。)に従う義務を課するものである。さらに,社会司法追跡調査に治療命令(injonction de soins)が含まれる場合もある。
 社会司法追跡調査の期間は,釈放時から計算され,原則として軽罪では10年,重罪では20年を超えてはならないが,2004年の改正により,特別な場合には,より長期とすることができることとなった。

イ 性犯罪者に対する司法データベース(Fichier judiciaire national automatise)

 前記1998年の法律は,捜査の過程で採取した生物学的痕跡から得たDNA及び一定の性犯罪により有罪判決を受けた者のDNAを集めたDNAデータベースシステムの設置を定めた。2001年及び2003年には,一定の性犯罪等を犯したことを裏付ける重要な証拠が存する者にまで対象者の範囲を拡大した。
 また,2004年の「犯罪の進化に司法を適合させるための法律」は,一定の性犯罪により有罪判決を受けた者等を新たに性犯罪者司法データベースに登録するシステムの設置を定めた。
 性犯罪者司法データシステムは,性犯罪の再発防止と性犯罪者の身元確認を容易にすることを目的としている。対象となる性犯罪者は,出所後も一定期間ごとに住所及びその変更等を司法当局に申告する義務を課せられ,これに違反した場合には,処罰の対象とされる。本人の身元,住所,住所の変更等に関する情報は,性犯罪者司法データベースに記録される。

ウ 性犯罪者に対する移動電子監視措置(Placement sous surveillance electronique mobile)

 2005年の「再犯者の処遇に関する法律」は,判決裁判所が,一定の性犯罪等を犯した者に対し,7年以上の実刑判決を社会司法追跡調査とともに言い渡す場合において,その者が成人であり,医学的鑑定がその者の危険性を確認し,釈放後再犯を防止するために不可欠であると認められるときには,社会司法追跡調査に含めて,移動電子監視措置(発信器を対象者の身体の一部に装着させ,その所在を司法当局が把握することをいう。)に付することを命ずることができることとした。
 移動電子監視措置に付される期間は,最大2年であるが,当該犯罪者の犯した罪が軽罪であれば1回に限り(通算最長4年),重罪であれば2回まで(同最長6年)の延長が可能である。