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2 保護観察 保護観察においては,類型別処遇制度(第2編第5章第2節2(2)参照)の「性犯罪等対象者」(強姦,強制わいせつ等の性犯罪を行った者のほか,下着窃取等犯罪の原因・動機が性的欲求に基づくものをいう。)に認定された仮釈放者,保護観察付き執行猶予者の全員を対象として,性犯罪者処遇プログラムを実施する。
保護観察における性犯罪者処遇プログラムの概要は,6-4-4-2図のとおりである。 6-4-4-2図 保護観察における性犯罪者処遇プログラムの概要 性犯罪者処遇プログラムは,後記(2)のとおり,4つのプログラムから構成される。このうち,認知行動療法を基礎とする中心的なプログラムであるコアプログラムについては,その受講を特別遵守事項として仮釈放者に対し義務付けることとしている。ただし,重度の精神障害者,重度の発達障害者(知的障害者を含む。),日本語を解さない者及び仮釈放期間が短期間である者は,コアプログラムによる効果が望みにくいため,義務付けの対象から除外される。また,執行猶予者保護観察法の改正(平成18年9月19日施行)に伴い,保護観察付き執行猶予者に対しても,判決言渡裁判所の意見に基づいて,受講を義務付けることとなった。 (1) 再犯リスク等の調査・判定の活用 矯正と同様,再犯リスク及び処遇ニーズについての調査・判定を行い,それを性犯罪者処遇プログラムの実施に反映させる。刑事施設において既に調査が行われている場合には,それを引き継ぎ,未実施の者については,保護観察所が刑事施設と同様の調査・判定を行い,処遇プログラムの実施に役立てる。
(2) 処遇プログラム ア 導入プログラム 導入プログラムは,実施対象者にコアプログラムについて理解させ,受講の動機付けを行うことを目的とする。保護観察官が,保護観察開始後速やかに実施する。
なお,刑事施設での性犯罪再犯防止指導を終了した者は,導入プログラムの受講を省略することができる。 イ コアプログラム コアプログラムは,「性犯罪のプロセス」,「認知のゆがみ」,「自己管理と対人関係スキル」,「被害者への共感」,「再発防止計画」の5課程とする。平成18年度は,東京,名古屋,大阪,福岡の各保護観察所において,「特別処遇実施班」を設置し,主に同班において,グループワーク又は個別指導により実施する。その他の保護観察所においては,今後,保護観察官が基本的には個別指導により実施する。
グループワーク等を実施する間隔は,おおむね2週間に1回とする。 ウ 指導強化プログラム 指導強化プログラムにおいては,再犯の兆候を速やかに把握して的確な対応をとるため,保護観察官の直接的関与及び保護司との接触を通じて,対象者の生活実態を詳細に把握し,具体的な指導助言を行う。保護観察官は,保護観察開始当初に調査・判定した対象者の再犯リスク,処遇ニーズに応じ,定められた頻度で実施対象者と面接を行う。ただし,実施対象者に再犯に至る兆候が認められた場合には,速やかに面接ないし必要な措置を行う。面接に際しては,あらかじめ定めたチェックリストを用いて,再犯の予兆の把握に努める。
エ 家族プログラム 家族プログラムにおいては,実施対象者の家族に対し,処遇プログラムの内容及び受講の必要性について理解を深めさせる。対象者の家族に対し,実施対象者がコアプログラムを継続的に受講するための協力を依頼するとともに,必要な相談助言を行う。保護観察期間を通じて,保護観察官が家族と面接を行うなどして実施するもので,家族を集めてグループワークにより実施することもある。なお,本プログラムによる家族への働きかけを受刑中から実施することもある。
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