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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第4章/第4節 

第4節 性犯罪者処遇プログラム

 平成16年11月に奈良県で発生した女児誘拐殺人事件等を契機として,性犯罪者処遇の充実を求める声が高まり,施設の内外において性犯罪者の再犯防止のため,効果的な処遇を実施する必要性が一層認識されるようになった。そこで,矯正,更生保護を通じて体系的・科学的な再犯防止プログラムを導入するため,17年4月に精神医学や心理学,犯罪学等の専門家を構成員とする性犯罪者処遇プログラム研究会が発足し,同研究会における検討結果等を基に,18年3月に法務省において性犯罪者処遇プログラムを策定し,18年度から実施することとなった。
 性犯罪者処遇プログラムは,諸外国における実証研究により効果が認められるとされた認知行動療法の理論を基礎として,グループワーク等を通じて自ら性犯罪を抑止する力を身に付けさせることを目標として行われる。
 このようなプログラムが全国的な規模において組織的に実施されるのは,我が国においては初めてであるため,プログラム実施担当者に対し,定期的に専門研修を実施し,必要な知識と技能を身に付けさせる必要がある。平成18年5月には,法務省矯正局,保護局及び法務総合研究所において,カナダ矯正局等から性犯罪者処遇プログラム等の専門家を招へいし,矯正,保護観察のプログラム実施担当者等により,処遇問題研究協議会が開催されたほか,各種の専門的研修が実施されつつある。

処遇問題研究協議会の様子

 性犯罪者処遇プログラムの実施に当たっては,プログラム受講者につき,刑事施設,保護観察所が相互に情報を共有するなど連携して,処遇の充実を図ることが特に重要である。
 また,プログラムの実施と並行して,実施結果についてのデータの蓄積も開始し,処遇効果の検証を行い,プログラムの改良を行って再犯防止機能の強化を図っていく必要がある。
 矯正及び保護観察における性犯罪者処遇プログラムの概要を以下に説明する。