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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第6章/第4節/2 

2 少年司法制度

 米国には,我が国におけるような単一の少年司法制度は存在せず,50の州とコロンビア特別区の51の法域ごとに全く別個の制度が並立している。ただし,これらいずれの法域においても,少年裁判所を設置して,成人に対する司法制度とは異なる少年司法制度を設けている。
 少年裁判所が管轄する事件には,成人が行えば犯罪となる非行(delinquency)事件のほかに,少年に固有の家出等の不良行為(status offense)事件が含まれる。
 少年裁判所に本来管轄権がある非行事件における非行少年の年齢の上限については,17歳とする法域が37州とコロンビア特別区,16歳とする法域が10州,15歳とする法域が3州である(2002年度議会会期末現在)。少年裁判所に本来管轄権がある非行事件における非行少年の年齢の下限については,これを定める法域は16州あり,その内訳は,10歳とする法域が11州,8歳とする法域が1州,7歳とする法域が3州,6歳とする法域が1州である(2005年3月現在)。
 近年,少年を刑事裁判所における刑事裁判手続の対象とする制度が拡大している。大きく分けると,[1]少年裁判所裁判官がその管轄権を放棄して,刑事裁判所への移送を行うか否かを決定する管轄権放棄(judicial waiver)制度,[2]一定の種類の事件につき,少年裁判所と刑事裁判所との競合管轄権を認めて,検察官がいずれの裁判所に訴追するかを決定する検察官先議(direct file)又は競合管轄(concurrent jurisdiction)制度,[3]一定の種類の少年や犯罪を少年裁判所の管轄から除外し,成人と同様に刑事裁判所の管轄とする立法による少年裁判所管轄権からの排除(statutory exclusion)制度の三つの形態に分けられる。法域によっては,[1]から[3]までの形態が組み合わされて採用されている。他方,刑事裁判所から少年裁判所に少年を移送する制度(reverse waiver)を採用する法域もある。
 少年裁判所が少年に刑罰を科することのできる制度(juvenile blended sentencing)は,15州で採用され,逆に,伝統的には少年裁判所しか少年に科することのできなかった処分を刑事裁判所が科することができる制度(criminal blended sentencing)は,17州で採用されている(2002年度議会会期末現在)。
 なお,刑事責任年齢に関しては,特別の定めのない限り,コモン・ローに従い,7歳未満の者には刑事責任能力がなく(infancy),14歳に達した少年には完全責任能力があり,その中間の7歳以上14歳未満の者については,刑事責任無能力の反証可能な推定が働くとされる。ただし,法域によっては,刑事責任年齢に関してコモン・ローと異なる特別の定めを有している。
 法域によって相違があるものの,非行事件は,おおむね,[1]インテーク(intake),[2]事実認定(adjudication),[3]処分(disposition)の過程を経る。
 インテークは,一般的には,事件をどのように取り扱うかを決定する手続を意味する。インテークを行う機関は,少年裁判所に置かれることもあれば,少年裁判所とは別の組織に置かれることもある。典型的なインテークの流れは,警察から送致された事件に対し,インテーク機関が法律上の要件を充足しているか否かによる選別を行い,次に,事件を正式な審判手続に移行させるか,非公式な手続で取り扱うかを決定する。事件を正式な審判手続に移行させる場合には,少年裁判所に対する審判申立て等により,事件は,少年裁判所に係属し,審判期日が設定される。他方,審判手続を開始せずに事件を取り扱う場合でも,少年が,任意の施設入所,プロベーション等の対象になることがある。
 少年裁判所での審判手続に関しては,1967年の連邦最高裁判所ゴールト事件判決が,非行事実認定手続において,少年とその親は,あらかじめ,審判の対象となる事実と弁護人選任権の告知を受けなければならないこと,少年とその親が弁護人を雇うことができない場合には,少年の弁護人が指名されなければならないこと,少年に対しても成人と同様に自己負罪拒否特権の適用があること,有効な自白がない場合には,少年が証人と対面し,反対尋問が可能な状況での証人による宣誓証言が非行事実の認定には不可欠であること等を判示し,1970年の連邦最高裁判所ウィンシップ事件判決が,非行事実の認定には,証拠の優越では足りず,合理的な疑いをいれない程度の証明が必要であるなどと判示している。
 少年裁判所は,事実認定手続において非行事実を認定すると,処分手続に移行し,少年に対する処分を決定する。非行事件における処分には,施設への収容,グループホーム,里親又はこれに類似する居住施設への入所,通常又は集中指導監督プロベーション,デイ・トリートメント又はメンタルヘルス・プログラムへの参加,罰金,社会奉仕等がある。非行事実を認定しない場合でも,少年が任意の施設入所,プロベーション等の対象になることがある。