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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第4章/第4節/2 

2 分類処遇制度

 少年院では,在院者一人一人の個性,長所,進路希望,心身の状況,非行の傾向等を十分考慮して,それぞれに適した処遇を行うため,分類処遇制度を採用し,在院者の特性及び教育上の必要性に応じて,[1]少年院の種類,[2]処遇区分,[3]処遇課程により,順次,在院者を分類・編成し,適切な処遇を行うように努めている。

(1) 少年院の種類

 少年院には,収容する少年の年齢,犯罪的傾向の程度及び心身の状況に応じて,次の[1]から[4]までの種類が設けられている。なお,施設は,医療少年院を除き,男女別に設置されている。
[1] 初等少年院 心身に著しい故障のない14歳以上おおむね16歳未満の者を収容[2] 中等少年院 心身に著しい故障のないおおむね16歳以上20歳未満の者を収容[3] 特別少年院 心身に著しい故障はないが,犯罪的傾向の進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を収容。ただし,16歳未満でも,少年院収容受刑者は,収容することができる。
[4] 医療少年院 心身に著しい故障のある14歳以上26歳未満の者を収容
 少年をどの種類の少年院に送致するかは,家庭裁判所の審判によって決定される。

(2) 収容期間と処遇区分

 保護処分として少年院に送致された者の収容期間は,法律上,原則として20歳に達するまでとされている。
 ただし,一定の場合には,収容継続が認められる。まず,送致時から20歳に達するまでの期間が1年に満たない場合には,送致決定の時から1年間に限って収容を継続することができる。また,これらの期間が満了する場合において,在院者の心身に著しい故障があり,又は犯罪的傾向がまだ矯正されていないため少年院から退院させることが不適当であると認められるときは,少年院の長は,家庭裁判所に収容を継続する決定の申請をしなければならず,家庭裁判所は,23歳を超えない期間を定めて,収容を継続する決定をしなければならない。さらに,23歳に達した在院者の精神に著しい故障があり,公共の福祉のため少年院から退院させることが不適当であると認められるときは,少年院の長は,家庭裁判所に収容を継続する決定の申請をしなければならず,家庭裁判所は,26歳を超えない期間を定めて,医療少年院での収容を継続する決定をしなければならない。
 これら法定の収容期間を受けて,少年院の実務では,行政運営上の収容期間を定めた処遇の類型として,処遇区分が設けられている。
処遇区分には,短期処遇と長期処遇とがあり,短期処遇は,一般短期処遇と特修短期処遇とに区分される。これら3種類の処遇区分は,それぞれ以下の者を対象としている。
[1] 一般短期処遇 少年の持つ問題性が単純又は比較的軽く,早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的・集中的な指導と訓練により,その矯正と社会復帰を期待できる者(収容期間は原則として6か月以内)[2] 特修短期処遇 一般短期処遇の対象者より非行の傾向が進んでおらず,開放処遇に適する者(収容期間は4か月以内)[3] 長期処遇 短期処遇になじまない者(収容期間は原則として2年以内)
 初等少年院及び中等少年院における処遇は,短期処遇又は長期処遇として実施され,特別少年院及び医療少年院における処遇は,長期処遇として実施される。
 収容期間は,個々の在院者の矯正と円滑な社会復帰を図るため,少年院法が定める範囲内において,弾力的に運用されている。長期処遇は,原則として2年以内とされているが,2年を超えて処遇する必要があるときは,当初から,2年を超える収容期間が設定される。一般短期処遇について6か月を超え,又は長期処遇について2年(又は当初に設定された2年を超える収容期間)を超えて処遇する必要が事後に生じたときは,収容期間が延長される(特修短期処遇は,延長しない。)。
 全国の少年院53庁の処遇区分別の内訳は,4-4-4-2表のとおりである。

4-4-4-2表 少年院の処遇区分等別内訳

 家庭裁判所は,少年の処遇に関し,少年院等に勧告をすることができ,審判で,処遇区分について,処遇勧告が付された場合には,これに沿って処遇区分が決定される。

(3) 処遇課程

 一般短期処遇及び長期処遇では,対象者の教育上の必要性に応じた処遇のコースとして処遇課程が設けられている。一般短期処遇には三つの処遇課程が,長期処遇には五つの処遇課程が,それぞれ設けられており,後者には,更に処遇課程の細分が設けられている。
 処遇区分・処遇課程等とその対象者は,4-4-4-3表のとおりである。

4-4-4-3表 少年院の処遇区分・処遇課程等とその対象者

 家庭裁判所が少年院送致の決定をすると,実務の運用として,少年鑑別所が,家庭裁判所による処遇勧告の内容,各少年院で実施している処遇課程,当該少年の処遇上の必要性等を勘案して,どこの少年院に送致するかを指定している。

(4) 処遇計画

 各少年院では,基本的処遇計画を作成し,その施設が行おうとする処遇を処遇課程等ごとに明らかにしている。一例として,ある男子少年院における職業能力開発課程V2についての基本的処遇計画を示すと,4-4-4-4表のとおりである。

4-4-4-4表 少年院における基本的処遇計画の例

 分類処遇制度により,各少年院には,共通した問題等を有する少年が収容されているが,個々の少年を見ると,その非行の原因となっている問題や今後伸ばすべき長所等は,異なっている。そこで,各少年院では,個々の少年ごとに個別的処遇計画を作成している。個別的処遇計画には,例えば,「覚せい剤等の薬物の乱用をやめる」,「不良仲間や暴力団との関係を断ち切る」,「親子の関係を改善する」といったように,その少年に達成させるべき個人別教育目標が具体的で本人に分かりやすい形で設定されており,その目標を達成する上で最もふさわしい教育内容及び方法を記載している。
 個人別教育目標のより早い達成のためには,在院者本人の向上意欲を喚起し,その自発的な努力によって改善・進歩の効果を上げることが重要である。そのため,少年院では,1級(上・下),2級(上・下)及び3級という処遇段階を設けた段階処遇が行われており,新入院者は,まず2級下に編入され,その後,改善・進歩の程度に応じて進級する。