前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成17年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/2 

2 家族関係に対する保護者及び非行少年の意識

 保護者調査及び非行少年調査の結果から,家族関係に対する保護者及び非行少年の意識を分析する。
 なお,保護者調査の分析対象者は,平成17年2月14日から同年4月15日までの2か月間に保護者会又は面会のために,少年院を初めて訪れた少年の保護者であり,このうち回答が得られた保護者は,父親(義父を含む。以下,本章において同じ。)165人(34.0%),母親(義母を含む。以下,本章において同じ。)321人(66.0%)の計486人であった。

(1) 養育態度等

 保護者調査における子育ての問題の有無に関する父母別の比較は,4-3-1-5図のとおりである。
 子育てに関し,「子供に口うるさかった」,「夫婦の子育ての方針が一致していなかった」,「子供の好きなようにさせていた」との項目に対し,「そう思う」(「とてもそう思う」及び「ややそう思う」の合計。以下同じ。)とする比率が高かった。また,児童虐待と関連する項目である「子供に感情的に手をあげていた」に「そう思う」と回答した比率も父母ともに40%を超えていた。
 父母別に見ると,父親の方が母親よりも,「子供の好きなようにさせていた」,「子供との会話が少なかった」,「子供の行動に無関心だった」と子供に対する接触の乏しさを強く認識している比率が高い。これに対し,母親は,父親よりも子育てに対する関心が高いものとうかがわれ,子育てに関し,「夫婦の子育ての方針が一致していなかった」,「子供に口うるさかった」と認識している比率が高く,夫婦間の意見の不一致,過干渉が問題であったと強く認識しているという相違が認められる。

4-3-1-5図 子育ての問題(保護者調査)

 非行少年調査における親の養育態度に関する主な質問項目の回答の経年比較は,4-3-1-6図のとおりである。
 「親が厳しすぎると感じる」点につき,「そう思う」とする比率が44.6%と最も高く,経年でもほとんど変化していないが,「親が自分のことを気にしないと感じる」及び「親が気まぐれであると感じる」点につき,「そう思う」とする比率は,低下傾向にある。子育てについての保護者の認識を考え併せると,非行少年は,主に母親の過干渉的な養育態度に対し,厳しすぎると反発を感じてはいるものの,その他の点に関する親への不満は弱まりつつあることがうかがわれる。

4-3-1-6図 親の養育態度の認識(非行少年調査)

 家庭生活に対する満足度に関する非行少年と一般青年との比較は,4-3-1-7図のとおりである。
 非行少年,一般青年ともに,家庭生活に対する満足度は,上昇傾向にあるが,非行少年の満足度は,一般青年と比較して10ポイント以上低い。

4-3-1-7図 家庭生活に対する満足度(非行少年調査)

(2) 非行原因等についての保護者及び非行少年の認識

 保護者調査において,「お子さんが非行に走った原因について,次のようなことがどのくらい当てはまると思いますか」との質問に対し,保護者が回答した結果を父母別に見ると,4-3-1-8図のとおりである。
 非行原因として「本人の問題」が「当てはまる」(「とても当てはまる」及び「やや当てはまる」の合計。以下同じ。)とする比率が,父親92.7%,母親97.8%と最も高く,次いで,「友人の問題」とする比率が,父親88.4%,母親91.1%であった。「家庭の問題」とする比率は,父親51.8%,母親74.7%と,両者にかなり差が見られ,父親において母親より家庭の問題を子供の非行と結び付けない傾向がうかがわれる。
 他方,非行少年調査において,「非行に走るのは,どこに主な原因があると思いますか」との質問に対し,非行少年が回答した結果は,4-3-1-9図のとおりである。
 非行原因を「少年自身」であるとする比率が53.0%と最も高く,次いで,「友達・仲間」(32.7%),「家族(親)」(8.4%)の順であった。保護者調査が複数選択回答であるのに対し,非行少年調査が単一選択回答である点で異なるが,非行原因につき,本人,友人,家庭の順としている点は同じである。

4-3-1-8図 非行原因の認識(保護者調査)

4-3-1-9図 非行原因の認識(非行少年調査)

 保護者調査において,「お子さんの非行について,次のことがあなたの現在のお考えにどのくらい当てはまると思いますか」との質問に対し,現状認識として「当てはまる」とする者の父母別の比率は,4-3-1-10図のとおりである。
 「子供の立ち直りの意欲を感じる」,「親子の関係が良い方向に向かっている」など,現在の子供の状態を肯定的に見る比率が高い。父母別に見ると,母親の方が父親より,「子供のことで苦労することが多い」,「いろいろ手をつくしたが,うまくいかないことが多い」と行き詰まりを強く感じるとともに,「親が変われば子供も変わってくる」,「これまでの親の生き方を変えていくことが必要と感じている」と親自身の変化の必要性を強く意識する傾向があることがうかがわれる。

4-3-1-10図 子供の非行に対する現在の認識(保護者調査)