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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/1 

1 非行少年の意識の変化

 非行少年調査の分析対象者は,平成17年2月14日から同年4月15日までの2か月間に全国の少年鑑別所に観護措置で入所した者である。男子2,552人(88.1%),女子345人(11.9%)の計2,897人で,平均年齢は16.9歳であった。
 法務総合研究所では,非行少年調査を平成2年及び10年にも実施しており,これらの調査と今回の非行少年調査とを比較することにより,非行少年の意識の変化について検討する。

(1) 自己意識

 自己意識に関する主な質問項目の回答の経年比較は,4-3-1-1図のとおりである。
 否定的な自己イメージに関連する「悪く思われているという感じ」及び疎外感に関連する「心暖まる思いが少ないという感じ」が「ある」(「よくある」及び「ときどきある」の合計。以下同じ。)とする比率は,いずれも低下傾向を示し,充実感に関する「物事に打ち込んでいるという感じ」が上昇傾向を示しており,非行少年の自己意識が肯定的な方向に変化しつつあることがうかがわれる。

4-3-1-1図 自己意識の経年比較(非行少年調査)

(2) 規範意識等

 規範意識及び社会的態度に関連する主な質問項目の回答の経年比較は,4-3-1-2図のとおりである。
 「場合によっては腕力に訴えてもよい」に「賛成」(「賛成」及び「やや賛成」の合計。以下同じ。)とする比率は,低下傾向を示しているが,他方,「自分のしたいことをする方がよい」及び「人に従っていた方が気楽でいい」に「賛成」とする比率は,上昇傾向を示している。自分のしたいことを優先させようとする自己中心的傾向が強まっているものの,腕力に訴えてまで自己主張を押し通そうとする強引さはなく,また,責任を取らない気楽な立場にいようとする傾向の強まりもうかがわれる。

4-3-1-2図 規範意識等の経年比較(非行少年調査)

(3) 友人関係及び社会に対する満足度

 非行少年調査の結果につき,総務庁及び内閣府が実施した世界青年意識調査の結果と比較分析する。世界青年意識調査の対象者(以下,本章において「一般青年」という。)が18歳から24歳までの男女であること,調査実施年が異なること等から,正確な比較は困難であるが,一般の青少年と非行少年との意識の相違を概括的に把握する上で有益であると考えた。
 友人関係に対する満足度に関する非行少年と一般青年との比較は,4-3-1-3図のとおりである。
 両者ともに友人関係に対する満足度は,経年で上昇傾向にあるが,非行少年が友人関係に「満足」(「満足」及び「やや満足」の合計。以下同じ。)とする比率は,一般青年と比較して約20ポイント前後低く推移しており,非行少年の方が一般青年よりも友人関係に対する満足度が低い傾向にあることがうかがわれる。

4-3-1-3図 友人関係に対する満足度(非行少年調査)

 社会に対する満足度に関する非行少年と一般青年との比較は,4-3-1-4図のとおりである。
 社会に対して「満足」とする比率は,非行少年も一般青年も同程度に低かった。

4-3-1-4図 社会に対する満足度(非行少年調査)