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 平成17年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/4 

4 公判段階における被害者の保護等

(1) 証人保護

 被害者が公判段階において証人として出廷し証言することは少なくないが,被告人や傍聴人の面前では十分な証言ができない場合や,証人のプライバシーが守られない場合があることから,証人の権利利益を保護するための制度が設けられている。すなわち,被告人の面前で供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる場合には,被告人と証人との間に,一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置(遮へい措置)を採ることができるほか,強姦罪等の被害者を証人として尋問する場合において,公判廷以外の場所に証人を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する方法(ビデオリンク方式)によって尋問することもできる。また,証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認められるときは,適当と認める者を証人に付き添わせることができる。
 証人尋問の際に遮へいの措置が採られた証人の延べ数は,平成12年は11月から12月までの間に104人であり,13年847人,14年912人,15年1,062人,16年1,074人と年々増加している。ビデオリンク方式による証人尋問が行われた証人の延べ数も,平成13年は6月から12月までの間に67人であり,14年122人,15年136人,16年217人と年々増加している。証人尋問の際に付添いの措置が採られた証人の延べ数は,平成12年は11月から12月までの間に10人であり,13年38人,14年68人,15年51人,16年87人とおおむね増加している(最高裁判所事務総局の資料による。)。
 裁判所は,裁判官の全員一致により,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には,裁判の審理を非公開とすることができる。さらに,必要があれば裁判所外での尋問や公判期日外の証人尋問を行うこともできる。また,遮へい措置,ビデオリンク方式,付添人等の方法によっても証人が被告人の面前では圧迫を受け充分な供述をすることができないと認められる場合や,特定の傍聴人の面前で充分な供述ができないと認められる場合には,裁判所は,被告人や特定の傍聴人を退廷させることができる。
 このほか,証人等の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類等を閲覧する機会を与えるに当たり,証人等の身体等に害を加え又は証人等を畏怖若しくは困惑させる行為がなされるおそれがある場合には,検察官又は弁護人は,相手方に対し,証人等の住居等を被告人を含む関係者に知られないようにするなど,証人等の安全が脅かされることがないように配慮することを求めることができる。

(2) 意見陳述

 裁判所は,被害者等から被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出がある場合には,公判期日において,その意見を陳述させるものとされている。
 公判期日に心情その他の意見を陳述した被害者等の延べ数は,平成12年は11月から12月までの間に22人であり,13年232人,14年457人,15年585人,16年735人であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。

(3) 裁判の傍聴

 刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は,被害者等から裁判の傍聴の申出がある場合には,傍聴できるよう配慮しなければならない。

(4) 刑事訴訟手続における和解

 刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者の間における当該被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には,共同して,この合意を刑事事件の公判調書に記載することを求める申立てをすることができ,これが公判調書に記載された場合は,その記載は,裁判上の和解と同一の効力を有する。
 この制度による申立てが公判調書に記載された延べ件数は,平成12年は11月から12月までの間に6件であり,13年55件,14年60件,15年54件,16年43件であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。