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 平成17年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/3 

3 不起訴処分に対する不服申立制度

 公訴権は,原則として検察官のみに付与されており,また,検察官には公訴の提起について広い裁量権がある。しかし,検察官が判断を誤り,起訴すべき事件を起訴しないという可能性もあることから,告訴人,被害者等に,検察官の公訴を提起しない処分(不起訴処分)に対する不服申立ての制度として,検察審査会に対する審査申立て及び管轄地方裁判所に対する付審判請求(「準起訴手続」ともいう。)の制度がある。

(1) 検察審査会に対する審査申立て

 検察審査会は,全国に201か所置かれ,選挙人名簿に基づき,くじで選定された11人の検察審査員(任期6か月)をもって組織され,申立てにより又は職権で,検察官の不起訴処分の審査を行い,「起訴相当」,「不起訴不当」又は「不起訴相当」の議決を行う。この審査申立権を有する者は,告訴人,告発人,請求人,被害者(被害者が死亡した場合においては,その配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹。)とされている。また,審査申立人は,検察審査会に意見書又は資料を提出することができる。
 平成16年5月28日に公布された刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)によって検察審査会法(昭和23年法律第147号)の一部が改正され(公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日から施行予定),検察審査会が「起訴相当」の議決をした後,検察官が再考をしても不起訴処分を維持したときは,検察審査会は,再審査を行い,起訴をすべき旨の議決をすることができ,この議決がなされた場合には,裁判所から指定された弁護士が公訴を提起し,その維持に当たるものとされている。
 検察審査会の事件の受理・処理人員(最近10年間)は,3-2-2-1表のとおりである。

3-2-2-1表 検察審査会事件受理・処理人員

 平成16年の新受人員のうち,刑法犯は2,340人であり,罪名別に見ると,業務上過失致死傷が563人と最も多く,次いで,文書偽造(353人),職権濫用(310人),傷害・同致死(219人),詐欺(168人)の順であった。特別法犯は,326人であり,公職選挙法違反が66人と最も多い(最高裁判所事務総局の資料による。)。
 起訴相当又は不起訴不当の議決がされた事件について,検察官が執った事後措置(最近10年間)を,原不起訴の理由別に見ると,3-2-2-2表のとおりである。

3-2-2-2表 起訴相当・不起訴不当議決事件の原不起訴理由別事後措置

 なお,検察審査会法の施行後の昭和24年から平成16年までの間に,累計で,延べ14万2,974人の処理がされ,延べ1万6,791人について起訴相当又は不起訴不当の議決がされている。このうち,延べ1,267人が起訴され,1,116人(自由刑384人,罰金732人)が有罪になっており,無罪(免訴及び公訴棄却を含む。)を言い渡された者は,76人である(最高裁判所事務総局の資料による。)。

(2) 付審判請求

 付審判請求は,公務員による各種の職権濫用等の罪について告訴又は告発をした者が,検察官の公訴を提起しない処分に不服があるとき,事件を裁判所の審判に付するよう管轄地方裁判所に請求することを認める制度である。
 地方裁判所は,付審判の請求に理由があるときは,事件を裁判所の審判に付する旨の決定を行う。この決定により,その事件について公訴の提起があったものとみなされ,裁判所は,公訴の維持に当たる者を弁護士の中から指定し,検察官の職務を行わせる。
 付審判請求の受理・処理人員(最近10年間)は,3-2-2-3表のとおりである。

3-2-2-3表 付審判請求受理・処理人員

(3) その他

 法律上の制度ではないが,検察官がした不起訴処分について,被害者等が上級検察庁の長に対し不服を申し立てて監督権の発動を促すことがあり,上級検察庁がこれを受理した場合には,処分を再検討し,処理結果を不服申立人に通知している。