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 昭和39年版 犯罪白書 第四編/第二章/二/1 

二 少年院における処遇

1 少年院入院者とその特質

 少年院は,家庭裁判所が保護処分のひとつとして行なった少年院送致の決定を受けた少年を収容し,これに矯正教育を授ける国立の施設であって,法務省の所管に属する。現在五八の本院と三つの分院がある。家庭裁判所は,少年院の種別を指定して少年院に送致するのであるが,少年院には次の四種別がある。(1)初等少年院 心身に著しい故障のない,一四才以上おおむね一六才未満の者を収容する。(2)中等少年院 心身に著しい故障のない,おおむね一六才以上二〇才未満の者を収容する。(3)特別少年院 心身に著しい故障はないが,犯罪傾向の進んだ,おおむね一六才以上二三才未溝の者を収容する。(4)医療少年院 心身に著しい故障のある,一四才以上二六才未満の者を収容する。この医療少年院だけは,男女を分隔する施設があれば,同一少年院に収容することができるが,その他の少年院は男子または女子のみを収容しなければならないこととなっている。
 非行少年に対して家庭裁判所の行なう終局決定のなかには,少年院送致のほかに,保護観察,教護院または養護施設送致,検察官送致(逆送),審判不開始,不処分等があるが,これらの処分のうち,少年院送致の占める比率を昭和三三年以降の最近五年間についてみると,さきに掲げたIV-34表のとおり,減少の一途をたどり,その実数もまた,昭和三四年以降減少の傾向こある。これを少年院の種別ごとにみると,IV-49表のとおりで,初等少年院は実数においても,構成比率においても前年に比べ大幅に増加しており,中等少年院は,これと対照的に減少していることが注目される。しかも,昭和三五年以降の数字をたどってみると,初等少年院には漸増の傾向を,中等少年院には漸減の傾向を明らかに認めることができる。特別少年院は実人員,比率とも減少,医療少年院はおおむね前年と変っていない。

IV-49表 少年院送致少年の少年院種別ごとの人員と率(昭和33〜37年)

 少年院送致となった者を年齢別にみると,IV-50表のとおり,一四才は昭和三三年以来つづけてきた上昇傾向を昭和三七年も,そのままつづけているが,三六年の急激な増加ぶりは三七年には一五才に移って,八・七%から一三・五%と大幅に増加している。一六才未満以上の少年はほぼ同率の線を示すか,または若干の減少をみせている。

IV-50表 少年院送致少年の年齢別人員の率(昭和33〜37年)

 次に,少年院送致となった者の行為別の比率は,IV-51表に示すように,昭和三七年には,窃盗が五〇・九%で第一位を占め,恐かつ一一・五%,ぐ犯九・六%,強かん六・七%,傷害五・〇%と続いている。昭和三八年の犯罪白書は,昭和三六年以前五年間の傾向として,窃盗,詐欺,横領等の財産犯の減少傾向と恐かつ,傷害,暴行等の暴力犯の増加傾向を指摘していたが,これらの傾向は,昭和三七年にはいると,やや鈍化してきた。すなわち,財産犯のうち,窃盗はやや増加しており,暴力犯のうち,恐かつと暴行はやや減少している。なお,性犯罪はその後も増加し続けており,一時減少傾向にあったぐ犯少年の若干の増加とともに,注目される。

IV-51表 少年院送致少年の行為別人員の率(昭和33〜37年)

 少年院送致となった者の家族関係をみると,IV-52表のとおり,昭和三七年においては,保護者として実父母のそろっているものは四九・一%(前年は四六・八%),これに実養父母のあるもの九・八%と養父母のあるもの一・六%を加えると,一応両親のあるものは六〇・五%を占めている。一方,刑法犯検挙少年の家族関係をみると,その八〇・二%(昭和三七年犯罪統計書による)が両親を有するものであり,この点からも,少年院送致の少年は,家庭の保護を期待しえない場合の多いことがわかる。

IV-52表 新収容者の保護者別人員(昭和37年)

 次に少年院に送致決定のあった者について,前処分(刑事処分,保護処分,児童相談所送致等)のあったものの比率を見てみると,少年院全体については,その七二・一%(昭和三六年司法統計年報による)を占めており,少年院種別ごとにみると,特別少年院では九二・五%,中等少年院では七五・八%,医療少年院では五九・三%であり,比較的年齢の低い少年を収容する初等少年院においてすら四一・三%となっている。なお,昭和三六,三七年の少年院新収容者について,少年院収容経験の有無を調べてみると,IV-53表のとおり,約二〇%のものが以前に収容された経験を持っていることがわかる。

IV-53表 新収容者の収容度数別人員(昭和36〜37年)

 IV-54表は昭和三三年以降五年間の少年院新収容者の学歴別人員を一〇〇分比で示したものであるが,昭和三七年においても,最も多いのは中学校卒業者の六〇・八%で,中学校在学の一五・四%,高校中退の一〇・〇%がこれに続いている。五年間の新収容者の学歴の推移をみると,不就学,小学校在学,中退,卒業および中学校中退が,年をおって減少しつつあるのに対して,ひとり中学校在学少年のみは年ごとに増加の傾向にあり,昭和三三年の七・五%が昭和三七年には一五・四%と,比率の上で倍加したことは注目に価する。

IV-54表 新収容者の学歴別人員の率(昭和33〜37年)

 次に,昭和三七年の少年院新収容者について,その知能指数分布をみると,知能指数九〇〜一〇九(普通知能)のものが最も多く,全体の三五・二%を占め,これについで,九八〜八九(準普通)のものが二八・二%,七〇〜七九のものが一九・二%,六九以下の精薄少年が一三・八%となっており,知能指数の分布曲線は低知能者の方に著しく片寄っている。
 少年院収容者の出院には,矯正の目的を達したと認められて退院する場合(退院)と,処遇の最高段階に向上し,仮に退院を許すのが相当と認められた場合(仮退院)とがある。IV-55表は,最近四年間における少年院種別ごとの仮退院者と退院者の平均在院期間を示すものであるが,最近二年間の医療少年院の場合を除いて,全般に,退院よりも仮退院の方が在院期間の長いことと,各種別少年院を通じて,昭和三七年は前年に比べて,在院期間がやや長くなったこと以外,著しい変化はみられない。なお,犯罪的傾向の進んだ者を収容する特別少年院と,心身に著しい故障のある者を収容して,これに医療的処置を施す医療少年院の平均在院期間の長いことは,けだし当然のことであろう。

IV-55表 少年院種別ごとの退院,仮退院別平均在院期間(昭和34〜37年)