前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和39年版 犯罪白書 第四編/第一章/三/2 

2 少年検察

 少年検察のおもな対象は犯罪少年の事件であるが,罰金以下の刑にあたる罪を犯した少年は,警察から直接に家庭裁判所に送致されることになっているから,少年検察の対象となる犯罪少年は,それ以外の懲役,禁錮やときには死刑にもあたるような重い罪を犯した者である。
 ところで,全国の検察庁が昭和三七年に新たに受理した少年事件の被疑者総数は,六四五,七六五人(検察庁間の移送,家庭裁判所からの送致および再起を除く)である。これを刑法犯,道交違反および道交違反以外の特別法犯の三者別にその内訳をみると,刑法犯は総数の二五・六%にあたる一六五,一四五人,特別法犯は総数の二・九%にあたる一八,九九五人で,道交違反は総数の七一・五%を占める四六一,六二五人である。

IV-28表 少年被疑者の年齢別通常受理人員(昭和33〜37年)

 IV-27表は,少年事件の通常受理総数について,年齢段階別に過去五年間の動きを示したものであるが,これをみると,刑法犯,特別法犯ともに増加の傾向にあり,とくに,一四〜一五才の年少少年において増加率が顕著である。すなわち,昭和三三年に比べて,昭和三七年には一六〜一七才の中間層では,一・四倍,一八〜一九才の年長層では一・八倍,一四〜一五才の年少層では二・二倍になっている。
 検察官は少年犯罪事件について,まず犯罪の成否およびその少年が犯人であるかどうかなどについて捜査を行ない,その結果,犯罪のけん疑がなく,家庭裁判所の審判に付すべき理由もないと思料する場合には,その事件を不起訴として処理する。また,共犯者の取調べができず事実関係が明らかにできないなどの理由で,事件の処理を一時中止することもあるが,これらの例外的な場合を除いて,検察官は少年事件について捜査を遂げたときは,かならず事件を家庭裁判所に送致しなければならない。少年事件以外の一般の事件については,検察官に起訴,不起訴の処分を決する権限が専属させられているが,少年事件では,検察官にかような処分権限はなく,原則として,すべての事件を家庭裁判所に送致しなければならない。送致にあたっては,検察官は,少年の処遇に関し意見をつけることとなっている。
 そこで,昭和三七年中における検察庁の少年事件処理状況を検察統計年報によってみると,既済総数(家庭裁判所からいわゆる逆送を受けたものを除く)は,七三五,八七〇人であり,そのうち家庭裁判所送致は八六・四%にあたる六三六,〇四〇人である。そのほか検察庁間の移送等が九九,〇四一人で,不起訴,中止は七八九人にすぎない。
 ところで,検察官の扱う少年事件には,右のほかに家庭裁判所からいわゆる逆送致されたものもあり,この逆送致を受けなければ,検察官は少年事件に対して公訴を提起できないし,また逆送を受けた事件は原則として公訴を提起しなければならない。
 そこで少年法第二〇条の規定によって,家庭裁判所から送致(逆送)されたものについて,各罪種別に昭和三七年中における検察庁の処理状況をみると,IV-29表のとおりである。これによると,既済総数二五四,七〇四人のうち,道交違反が二三一,〇八六人で総数の九〇・七%を占め,刑法犯は二三,〇三二人で九・〇%,その他の特別法犯は五八六人で,〇・三%となっている。

IV-29表 少年被疑事件の処理状況(既済)(少年法20条の規定により家庭裁判所より送致のあつたもの)(昭和37年)

 次に,起訴された者について罪種別にみると起訴総数一一〇,九一〇人のうち,道交違反が九九,八五一人と圧倒的に多数であり,刑法犯は一〇,七八七人である。刑法犯について,さらに罪名別にみると,過失傷害が八,二四二人で大多数を占め,窃盗の九〇三人,傷害の五四二人,強かんの二九五人,恐かつの二三五人,強盗の二三〇人がこれについでいる。過失傷害の大部分は交通関係の過失事犯であるから,結局,少年事件の起訴人員のきわめて多くが,交通関係事犯によって占められていることがわかる。