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 昭和39年版 犯罪白書 第四編/第一章/二/1 

二 最近の少年犯罪の特色と問題点

1 少年犯罪の一般的特色

 (1) 多い窃盗,恐かつ,強かん,強盗 少年犯罪の罪種がどのようなものであるかは,すでにIV-2表に示したとおりであるが,数の上で多いのは,なんといっても窃盗で,昭和三八年における窃盗の検挙人員は八八,八六九人におよび,少年刑法犯全検挙人員の五〇・九%にあたっている。
 窃盗に次いで多いのは傷害で,一四,七一八人であるが,恐かつの一四,六三六人がすぐこれに続いている。しかも恐かつは,このところ年年増加の傾向にあり,暴力的財産犯とみなされるから,少年犯罪の中で,数の上で優位を占めているのは窃盗を中心とする財産犯であるといえる。
 IV-8表は,一四才未満,低年齢層,中間層,年長層の各段階別に,主要罪種別の検挙人員とその百分率を示したものであるが,窃盗は年齢の低い者ほどその比率の高いことがわかる。すなわち,一四才未満では八四・七%で,その大部分が窃盗であるのに対し,一八才〜一九才の年長層になると三三・五%になり,二〇才以上の成人になると二五%以下になる。したがって,窃盗は少年犯罪の特徴的な犯罪であるということができる。

IV-8表 主要罪種年齢別検挙人員(昭和37年)

 家庭裁判所の保護事件においても,窃盗は刑法犯の五〇%を占め,種種の手口の中で,もっとも多いのは万引であり,忍び込み,自転車窃盗,店舗荒し,あき巣などがこれに続いているが,最近は乗用車の普及とともに,それに関連した盗みが多くなっている。アメリカでも,乗用車の普及とともに,自動車窃盗が著しく増加したが,わが国でもそのような傾向がみえはじめている。
 次に,成人,少年を含めた刑法犯検挙人員総数の中で,少年の占める比率を求めると,IV-9表に示すように,昭和三四年には強かんが五五%で第一位を占め,恐かつの五三・七%,強盗の四四・二%,窃盗の三五・五%がこれに次ぎ,平均比率を下回るものは,詐欺(七・四%),横領(一〇・二%),殺人(一四・〇%),脅迫(一六・二%′),傷害(一八・〇%),放火(一九・六%)であった。

IV-9表 少年刑法犯の主要罪種別検挙人員と全刑法犯検挙人員に対する比率(昭和34,38年)

 しかるに,昭和三八年には,恐かつが六〇・三%で主位に立ち,強かん(五〇・三%),強盗(四八・四%),窃盗(四七・五%),の順になっている。
 過去数年間の統計をみると,強かんと恐かつはその順位が相前後しているが,いずれも五〇%以上で,つねに上位を占め,強盗と窃盗がこれに次いでいる。
 このように,刑法犯では恐かつ,強かん,強盗などの暴力的財産犯や性犯罪の占める割合が高く,これらの犯罪においては,総検挙人員の約半数を少年が占めているということは驚くべき数字といわなければならない。
 (2) 高い共犯率 少年は一般に所属欲求がおう盛で,付和雷同性が強いが,共犯者のいることによって,集団心理にかり立てられ,単独ではとうていできないようなことを敢行することがよくある。
 そこで,刑法犯で検挙された事件について,主要罪名別に,(共犯事件の比率を求めると,IV-10表に示す通り,成人にくらべて少年の共犯率は著しく高いことがわかる。すなわち,昭和三七年には,少年事件の共犯率は二八・一%で,成人の一〇・八%にくらべると二・六倍になる。しかも,その割合は,多少の高低を示しながらも,昭和三一年の二三・一%,同三三年の二四・六%,同三四年の二六・五%と上昇傾向をみせていることがわかる。

IV-10表 主要罪名別刑法犯の共犯事件数の率(昭和33〜37年)

 これらの数字から少年の集団犯罪が,最近とくに多くなっているということはできないにしても,犯罪集団化の傾向は少年犯罪の特徴であり,最近はそのような傾向が,ますます顕著になっているということができる。
 これを罪種別にみると,共犯者を伴う率の高いものは強盗(四二・三%),強かん(三七・六%),恐かつ(三四・五%),窃盗(三一・〇%),傷害(二九・九%)などで,共犯率の低いものは,殺人(七・二%),放火(二・三%)である。また,成人の共犯率と比較して,少年のそれがとくに高いのは強かん(成人の三・一倍),窃盗(成人の二・六倍),暴行(成人の二・三倍),である。
 昭和三六年および三七年において,全国の刑務所,少年刑務所,少年鑑別所,少年院に収容さ札ている性犯罪者について,法務総合研究所が共犯率を調査したところによると,男子成人受刑者では三五・六%であったのに対し,少年鑑別所収容の男子では五六・六%,少年院収容の男子では六二・二%,少年刑務所収容の男子では実に七五・四%におよんでいた。
 このように,少年の強かんに共犯率が高いということはいわゆる「輪かん」が多いということであって,昭和三七年の犯罪統計によれば,二,一九九件の強かん事件のうち,四人以上の共犯によるものが二九六件にのぼっている。
 この共犯率を六大都市(東京,大阪,神戸,名古屋,横浜)についてみると,少年事件の共犯率は昭和三一年の二六・八%から逐年増加し,昭和三四年には三三・五%,昭和三七年には三六・九%に上昇している。これを全国平均の共犯率二八・一%と比較すると,九%近くも高いことになり,少年事件の共犯率は大都市において,きわめて高率であることがわかる。