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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第四章/五/2 

2 更生保護会収容者のなりゆき

 更生保護会に収容され,保護された者が,その後どのような更生の過程をたどったかを調査することは,非常にむずかしく,現在までに広い範囲にわたって行なわれた調査はない。昭和三七年に,法務総合研究所が「更生保護会収容者の処遇方法に関する研究」に着手する予備段階として行なった「なりゆき調査」は,小規模なものではあるが,一応のよりどころになると思われるので,以下その結果をみることにする。
 調査の対象は,昭和三七年一〇月一日以降に,東京保護護察所が受理し,更生保護会に収容方を委託した三〇〇人である。そのうち,調査が十分でなかった一名をのぞき,集計した結果は,次のとおりである。
 最初に,いかなる者が更生保護会に収容されているかをみると,対象者の九五・六%が仮釈放および満期釈放者で,九六・六%が刑務所にはいった経験をもち,三回以上の入所経歴者は六五%に達している。また,以前に更生保護会に収容された経験のあるものは五〇%以上で,二回以上収容されたものが一七・三%である。したがって,この人たちの多くは,その人格や環境に,更生のさまたげになるような問題をもっているものであることがわかる。
 さて,これら収容者のその後のなりゆきはどうであろうか。まず,二九九人中二四人(八・〇%)は,収容方を委託された更生保護会へ当初から入会せず,所在をくらましている。次に,残りの二六五人中,一月以内に無断退会等,正当な理由のない退会をしている者が二三人(八・四%)あり,さらに,再犯状況をみると,前記二九九人中一八人(六・〇%)が一月以内に,五一人(一七・一%)が三月以内に,また八一人(二七・一%)が六月以内に再逮捕されている。
 このように,更生保護会収容者の再犯状況はきわめて悪く,その更生をはかることは決して容易ではないが,これら収容者は,保護観察所に保護を求めてきた者である以上,保護観察所においても,また更生保護会においても,できるかぎり綿密な調査と強力な指導により,適当な保護措置をとって,更生させる努力をしなければならないであろう。そのために,専門的なケースワーカーやカウンセラーを保護観察所にも更生保護会にも常置して,その技法をとり入れることが必要であるとともに,これらの対象者が,安定できる住居や職場の確保等に,格段のくふうをするべきであろう。
 なお,前記の調査対象者の大部分は財産犯であるが,暴力犯罪者は四五人(一五・一%)おり,そのなりゆきをみると,六月以内に再逮捕された者は一〇人(二二・二%)で,再犯罪名が同じ暴力犯罪であるものは七人である。