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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第一章/四/10 

10 カウンセリング,心理療法

 カウンセリングや心理療法の技法は,今日では犯罪者や非行少年の矯正に欠くことのできないものとなっている。わが国でも,すでに一部の施設(法務省矯正局の調査では,三八施設)で実施されているが,その技法は相当の専門的知識と訓練とを必要とするため,特定の専門家によって,試験的に,特定の対象に対して試みられているにすぎず,米国のカリフォルニヤやニュージャージーなどで実施されているように,全被収容者を対象とし,多数の非専門職員を訓練して,計画的に全面的実施に向かっての努力は,わずかに中野刑務所および山口刑務所にみられるにすぎない。しかし,すでに述べたように,昭和三八年には,中野刑務所と同様の機能をもつ分類センターが八か所に設けられ,専門職員も配置されることになったので,分類に応ずる処遇技術として,カウンセリングあるいは心理療法の発展が期待される。
 なお,昭和三八年,山口刑務所は山口少年鑑別所の協力を得て,職員約六〇名を訓練したのち,三か年にわたって実施した,職業訓練生全員および処遇困難者に対するグループ・カウンセリング,ならびに,自己顕示性,爆発性,意志薄弱性などの性格的に問題のあるもの,および知能的に低いものに対する個別カウンセリングの結果をまとめ,貴重な資料を公にし,注目をひいた。
 また,法務総合研究所でも,法務省矯正局の協力を得て,矯正施設における,もっとも有効なカウンセリングあるいは心理療法のとりいれ方についての検討を開始した。この検討によって,どのような対象に,どのような方法を,どのように適用すればよいか,また,その効果は,どのようにして評価するか,あるいは,実施者の訓練をどのようにすればよいか,他の処遇との関連をどのように調整するか,などの諸問題に一応の解決が与えられ,適切な導入の方向が明らかにされることになろう。