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1 刑務事故,懲罰事犯発生の概況 昭和三八年におけるおもな刑務事故は,III-43表(1)のとおり七〇件で,昭和三七年と比較すると,逃走事故が増加した半面,自殺が半減しているという特色があるが,けっきょく総数では,三件の増加をみた。
III-43表 おもな刑務事故ならびに懲罰事犯発生状況(昭和36〜38年) また,昭和三七年中のおもな懲罰事犯受罰人員は,二八,五三六人で,受罰者率は,一日平均在所人員ひとりあたり年間〇・四人の割合である。すなわち,昭和三六年に比較すると,受罰人員は減少しているが,一日平均在所人員に対する比率は変っていない。なお,受罰者率は,イギリス本国と比較すると若干低い(一九六二年の資料では,一日平均在所人員ひとりあたり〇・五人の割合である)。次に,これらの受罰者について,その事犯の種類をみると,III-43表(2)に示すとおり,物品の不正所持,授受などに関するものがもっとも多く(全体の三五%),同衆間あるいは職員に対する暴力的行為がこれについでいる(二三%)。物品についての不正行為は,受刑者以外の被収容者に多いが,暴力行為に出るものは,受刑者もその他の被収容者も変らない。暴力行為にまではおよばないが,抗命,争論で懲罰に付されたものも,受刑者とその他のものも,ともに同じように多い(両群ともに一四%)。その他,受刑者のみにみられるものに怠役,受刑者以外のものに比較的多いものに通声,談話があり,拘禁の性質を反映した事犯がみられる。 このような懲罰事犯は,たいていの場合,あらかじめ「集団処遇困難者」として分類される人たちによってくりかえされている。受刑者についての調査では,III-44表のとおり,集団処遇困難者の割合は一六%を占め,その理由も,乱暴,暴行によるものが三分の一以上を占め,常習的に反則をくりかえしたり,不平不満が多く,いつも職員をてこずらせているものを合わせると,三分の二にもなる。また,このような処遇困難者は,別に述べられているように(本章6「暴力犯罪受刑者の実態と処遇」参照),暴力関係犯罪と密接に関係をもつので,その取扱いに新たなくふうを試みることが必要であろう。 III-44表 集団処遇困難な受刑者の人員,比率,事由等(昭和38年12月25日現在) |