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4 上訴 第一審判決に対する控訴率は,昭和三三年頃までは逐年減少の傾向にあったが,昭和三四年からふたたび増加の傾向をみせている,II-21表によると,控訴率は,簡裁事件が地裁事件よりも著しく低い。上告率はきわめて高く,四〇%前後を上下している。
II-21表 上訴率の推(昭和30〜36年) 次に,控訴申立人別にみると,II-22表のとおりである。この表によると,総数の約九二%までが,被告人側からの控訴であり,検察官の控訴は約六%で,双方からの控訴を合計しても約八%である。さらに上告になると,この比率の差は顕著となり,昭和三六年における最高裁判所の新受事件人員は,三,八一五人であるが,そのうち九八・七%の三,七六七人は被告人側の上告によるものである。II-22表 控訴申立人別の数と百分率(昭和32〜36年) 次に,昭和三六年における控訴の理由を,申立人別に示すと,II-23表のとおりである。これによると,量刑不当が圧倒的に多い。これは,わが国の法定刑は幅が広く,裁判官の裁量による範囲が大であるため,量刑を争う余地が多いことによる結果であろう。II-23表 申立人別の控訴理由別人員(昭和36年) 最後に,上訴の結果であるが,昭和三四年以降の状況はII-24表・25表のとおりである。すなわち,昭和三六年の控訴棄却率は五八・七%である。これに控訴取下げの一五・九%を加えた七四・六%は,控訴がその目的を達しなかった率といえる。これは全控訴申立事件についての裁判結果であるが,検察官控訴の同年の控訴棄却率は三八・九%であり,被告人側の控訴が棄却される率よりかなり低くなっている。また,上告棄却は八四・五%,上告取下げが一四・四%,その合計は九八・九%にも達し,破棄率は,わずかに一・一%にすぎない。このことと,上告申立ての約九九%が被告人側の上告であることを考えあわせると,被告人側が行なう上訴申立て,とくに上告申立てには,理由のないものが多く,これが裁判所の負担を加重せしめ,ひいては,全般の訴訟遅延の原因の一つともなっているのではないかと疑われる。II-24表 控訴審終局被告人の終局区分別人員と率(昭和34〜36年) II-25表 上告審終局被告人の終局区分別人員と率(昭和34〜36年) |